現代社会における、”いいあんばいのコミュニティ”とは? 

はじめまして、ライターの髙山です。
普段は、まちづくりや地域公共交通に関する計画策定支援、大規模施設(住宅地、商業施設、工場等)の立地に伴う渋滞対策検討支援といった業務に携わっています。

今回は、まちづくりの中でも、今後ますます重要な課題となってくるであろう地域コミュニティについてお話したいと思います。

おとなりさんと声かけあっていますか?

町内などの地域コミュニティが希薄化していると言われるのは、今に始まったことではありません。日本は核家族化が進み、都市部では、おとなりさんとの関係が希薄になってきていると小学生のときに授業で聞いた記憶があります(約30年も前でしょうか)。

そのため行政は、地域コミュニティを維持するための対策を模索してきましたが、抜本的な解決には至っていないように感じられます。

しかし、これからの人口減少時代において、人と人とをつなぐ地域コミュニティは、やはり重要であると考えます。
平成28年12月末に発生した糸魚川市(新潟県)の火災では、大規模な火災にもかかわらず、住民どうしの声かけにより全員無事だったと言われています。地域コミュニティが形成されていることにより、被害が最小限に抑えられた良い事例と言えます。

とはいえ、地域コミュニティが強すぎるために、窮屈に感じていた時代があったことも事実であり、これからは、そのさじ加減が重要と考えます。

まちづくりに関するワークショップを各地で開催し、コミュニティデザインを実践している山崎亮さんも、著書の中で以下のように言っています。

「まちのことは行政にお任せ」とはいっていられない状態になってきたということだ。地域に住む人たちが力を合わせてまちのマネジメントに参加しなければならない。あるいは主体にならねばならない。とはいえ、「昔に戻ろう」というスローガンが必要なのではない。税制が変わり、ある程度生活も個人化された後のつながりを模索するのだから、人々はかつてのような強いつながりを求めているわけではない。しがらみの多い社会に戻りたいわけではない。現代を生きる人たちにとって、つながりがなさすぎるのは生きにくいが、つながりがありすぎるのも生きにくいのである。僕たちはいま、コミュニティデザインという手法を使って「いいあんばいのつながり」がどれくらいの強度なのかを探っているところだ。
(出典:『コミュニティデザインの時代』山崎 亮 著)

では、「いいあんばいのつながり」とは、どのようなものでしょうか?

また、はたしてそのような「地域コミュニティ」が形成されることがあるのでしょうか?

このようなことを考えているなかで、私の生まれ故郷である村上市(新潟県)が開催する祭りに参加するため、帰省した時のことを思い出しました。

故郷への帰省、そして村上大祭への参加

村上市で毎年7月6日と7日に開催されている村上大祭(県指定無形民俗文化財)は、380年以上も前から続くお祭りで、19町内が屋台(やたい)※1を持っています。各町内の人が2日間にわたって市内を引き廻るのです。(村上大祭の詳細は、HPをご覧ください。)

私の故郷、村上市庄内町には、屋台のほかに荒馬(あらうま)※2という乗り物があり、小学生が、それを担いで午前2時から市内を1日中、歩きまわります。

私も小学生の頃、親に付き添ってもらい荒馬を担いでいました。今回は、町内の子供たちの付き添いとしての参加です。

荒馬に付き添って市内を廻っていますと、全町内の方々が、乗り子である子どもたちに「頑張れよ〜」と声をかけてくださり、拍手をくれるのです。

小学生のころ一緒に荒馬を担いでいた先輩方々の息子さんが、今、荒馬を担いでいます。

祖父や母親に付き添ってもらい荒馬を担いでいた自分が、今は町内の子どもたちに付き添って市内を廻っているのです。

このように、親から子に祭りが受け継がれていくのかと思うと泣けてきましたね。

普段は挨拶程度の近所どうしの付き合いも、祭りの開催に向けて力を合わせて準備を進めていきます。

特に、荒馬の乗り子を探すのは、少子化のためみつけにくいという一面もあります。荒馬の宿番になった年は、他の町内の人にもお願いをして、なんとか乗り子をみつけている状況です。準備には苦労しているものの、力を合わせて準備を進め、他町内の人も巻き込んで開催できることが、村上における「地域コミュニティ」の懐の深さだと感じました。

私の故郷でも、近所どうしの交流は、昔と比べて減っているように感じます。しかし、祭りの時には地域が一体化するということをあらためて感じました

このことが、今日において「いいあんばいのつながり」がある地域コミュニティを形成していると思いました。

まとめ

地域コミュニティの希薄化がますます進むと言われている現在、「いいあんばいのつながり」がある地域コミュニティが形成されるには、その地域で昔から続いているコトやモノに焦点をあててみることです。

村上市には、今回紹介しました村上大祭のほかにも、新鮮な野菜や魚が一堂にそろう市場「六斎市(ろくさいいち)」や、古い町屋の中を見ることができる「町屋の屏風まつり」などといったコトが開催されており、これらも地域コミュニティを形成している要因のひとつかもしれません。

あなたの街や故郷にも、昔から続いているコトモノがきっとあります。その中身を探してみると面白いかもしれませんね。もし、あれば仲間と一緒に参加してみると「いいあんばいのつながり」が発見できるのではないでしょうか。

 

<語句の説明>
※1 一階には囃子をするための楽屋台を設け、二階には人形などの飾り物を載せた2階建ての手引き車。
※2 木製で堆朱を施してあり、武将の旗差物馬標が飾られている。肩から担ぐ構造となっている。

<参考資料>
山崎 亮,2012,『コミュニティデザインの時代』中公新書

 

この記事を書いた人

高山 康弘名古屋事務所 営業開発課

まちづくりや地域公共交通に関する計画策定支援、大規模施設の立地に伴う渋滞対策検討支援

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