子ども・子育て支援新制度から3年<後編> ~何が変わったのか?これからの課題は?~

2018.04.26

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福祉のおはなし

こんにちは、ライターの一杉です。
<前編>を読んでいただき、ありがとうございました。まだの方はぜひ<前編>から読んでください。

この<後編>では、子ども・子育て支援新制度によって、具体的に何が変わったのか、そしてこれからの課題は何なのか、変更点を再確認しながら、今後の課題について展望します。

「保育が必要な者」として認定されないとけないの?

新制度になって大きく変わった点は、「保育に欠ける者」から「保育が必要な者」に施設利用対象者が変わった点です。
『この子を保育する人がいない』から、『この子には保育が必要』に、対象者の幅が拡大したというわけです。

そこで支給認定という概念が生まれました。保育の必要性の認定とも呼ばれます。

・1号認定・・・幼稚園または認定こども園が利用できる
・2号認定・・・保育所または認定こども園が利用できる
・3号認定・・・保育所・認定こども園・地域型保育が利用できる(3歳未満)

お子さんが何号認定になるかによって利用できる施設が変わってきます。
また、保育が必要な者かどうかの判断は、以下の基準に基づいて行われます。

1 就労
2 妊娠・出産
3 保護者の疾病・障害
4 同居親族等の介護・看護
5 災害復旧
6 求職活動
7 就学
8 虐待やDVのおそれがある
9 育児休業取得時に、既に保育を利用している
10 その他市町村が定める事由

ということで、昼間の就労だけでなく、夜間労働やパートタイムでの就労、虐待やDVのおそれがあることや、求職活動をしているといったことも、保育が必要な理由に含まれました。
1号認定を希望する場合、こうした基準による審査はありません。

保育標準時間と保育短時間

次に、保護者の就労時間に応じて保育必要量が決められます。
これには、保育標準時間保育短時間があります。
保護者の就労時間が概ね月48~64時間以上120時間未満だと保育短時間、月120時間程度だと保育標準時間になります。

この就労時間の区分は市町村によって異なるため、お住まいの市町村にご確認ください。

・保育標準時間・・・1日の最大利用可能時間が11時間
・保育短時間・・・・1日の最大利用可能時間が8時間

優先利用

そして、各家庭の事情により、優先的な利用を認めるケースがあります。
下記は国が示した一例ですが、こちらも市町村によって項目や比重が異なります。

1 ひとり親家庭
2 生活保護世帯
3 生計中心者の失業により、就労の必要性が高い場合
4 虐待やDVのおそれがある場合など、社会的養護が必要な場合
5 子どもが障害を有する場合
6 育児休業明け
7 兄弟姉妹(多胎児を含む)が同一の保育所等の利用を希望する場合
8 小規模保育事業などの卒園児童
9 その他市町村が定める事由

これらを加味して、優先度が高い人から希望する施設を利用することができる仕組みになっています。
したがって、支給認定を受けても希望する施設を利用できるとは限りません。
一方で、市町村が定める優先利用条件にたくさんあてはまる場合は、希望通りの結果を得られる可能性が高くなります。

見えてきた課題

子ども・子育て支援新制度により、認定こども園が普及し、保育所等を利用できる対象者が拡大しました。
これは良いことですね。
残念ながら希望する施設を全員が利用できるわけではなく、希望した施設をあきらめざるを得ないケースも出てきています。 

保育所や認定こども園が増え、子どもの数は減っているのに、いつまで経っても待機児童の問題は解消しません。
性善説で考えると、共働きの家庭がどんどん増えて、保育が必要な者が施設の増加ペースを上回っているから、と考えられます。
性悪説で考えると、子どもを預けたいがためにパート労働を始めたり、求職活動をしたりして、本来預ける必要性が低い方たちのニーズが増えている、と考えられます。
皆さんの周りではいかがでしょうか。 

また、今回の記事で市町村ごとに違うことがたくさんあると理解していただけたかと思います。
自分の住んでいるところはどうなっているのか、是非確認してください。
市町村によってはコンシェルジュが配置されていて、わかりやすく案内してくれます。
様々な相談にのってくれますよ。

まとめ

<前編>、<後編>にわたって、子ども・子育て支援制度についてみてきました。
実は、今回触れた部分はほんの一部分にすぎません。
保育料の問題、公立私立の格差、新制度に移行できない(しない)施設の問題、市町村をまたいで広域で利用する場合の問題、認定こども園がない地域の存在など、多くの課題が残されています。 

市町村が2015(平成27)年に策定した子ども・子育て支援事業計画は、見直しの時期を迎え、2018(平成30)年度には保護者向けアンケートを予定している市町村も多くあります。
自治体職員の皆さんは、まずは現場の声を確認することが大事ですね。

※<前編はこちらから!

この記事を書いた人

一杉 浩史営業企画本部

専門はまちづくり。自治基本条例や総合計画、地方創生総合戦略などの策定を支援。 何足のわらじを履いているか自分でもわからない(笑)。

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