「予防」を核とする介護保険制度と向き合う2つのキーワード!

2016.11.28

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福祉のおはなし

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こんにちは、ライターの山村です。
だれでも、年齢とともに、将来の介護等への不安は高まってくるものだと思います。

 「介護保険制度があるから大丈夫!」

 と思っているあなた、今の介護保険制度は「予防」を核として成り立っていることをご存じでしょうか。 

たとえば、前回の記事(介護保険料算出方法のお話 保険料は、こうして決まる!)でご紹介した「介護保険料」は、「予防」することにより介護保険サービスを使わない人が多くなることを見込んだ上で算定されています。つまり、「予防」の効果が十分に発揮されなければ、介護保険料による財源は不足してしまうということです。

私たちはこれから、「予防」を核とする介護保険制度と、どのように向き合っていけばいいのでしょうか。

今日は、予防に関する “2つのキーワード”をご紹介したいと思います。

「介護予防」は“国民的な課題!”

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最初のキーワードは「介護予防」です。 

図をみるとわかるとおり、現在の介護保険制度のサービスには「介護予防」というキーワードが随所に見られます。これは、介護保険制度下のサービスにおいても、介護が必要にならないよう予防する取り組みを推奨していることの表れです。 

「介護予防」という言葉の意味をおさえておきましょう。 

厚生労働省の『介護予防マニュアル改訂版』では、介護予防を、

「要介護状態の発生をできる限り防ぐ(遅らせる)こと、そして要介護状態にあってもその悪化をできる限り防ぐこと、さらには軽減を目指すこと」 

と定義しています。

要介護状態にならないことだけではなく、遅らせること、軽減を目指すことも「介護予防」に含まれます。 

また、介護保険法には、国民は自らの努力によって介護予防に努めるべきことが記載されています。(法第4条)

今日の日本では、「介護予防」はすべての国民が取り組むべき課題といえるのではないでしょうか。

どう「介護予防」するの?

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では、具体的に、どう「介護予防」したらよいのでしょうか? 

『介護予防マニュアル改訂版』には、介護予防の手段として、

  • ・複合プログラムの実施
  • ・運動機能向上
  • ・栄養改善
  • ・口腔機能向上
  • ・閉じこもり予防
  • ・認知機能低下予防
  • ・うつ予防

について記載されています。 

さらに、同マニュアルには、“介護予防が目指すもの”として、 

「単に高齢者の運動機能や栄養状態といった個々の要素の改善だけを目指す」

のではなく、 

「これら心身機能の改善や環境調整などを通じて、個々の高齢者の生活機能(活動レベル)や参加(役割レベル)の向上をもたらし、一人ひとりの生きがいや自己実現のための取り組みを支援して、生活の質(QOL)の向上を目指す」

と記載しています。 

つまり、予防して、元気を維持し、いきいきとした生活をおくりましょう!ということですね。

そこには、社会や地域との関わり、人と人との関わりが不可欠です。そうした関わりこそが「介護予防」には不可欠なのです。

2つめのキーワードは「ソーシャル・キャピタル」

運動するとか、栄養を改善するとか、そうしたことが「介護予防に効果がありそうだ!」というのは、直感的にも理解できると思います。

でも、地域や社会に関わることが「介護予防に効果的!」というのは、少し広い意味で捉える必要があります。 

そこで登場するのが「ソーシャル・キャピタル」という概念です。 

ソーシャル・キャピタルとは、社会の絆や人々の信頼関係から生み出される資源がその地域の人々の健康に良い影響を与えるという考え方です。

その起源は、1950年頃のアメリカにあります。

移民が助け合いながら暮らしていたロゼトという街では、周囲の街に比べて心筋梗塞による死亡率が低いという現象がみられました。生活習慣等でこの現象を説明できなかったので、これはソーシャル・キャピタルによるのではないかと考えられました。 

助け合い、互いに信頼しあって暮らす地域では、みんなが健康になったということですね。 

つまり、地域や社会に関わることを通じて、ソーシャル・キャピタルを高める(信頼関係や絆を深める)ことが大切というわけです。 

ちなみに、ソーシャル・キャピタルの提唱者であるロバート・パットナムは、ソーシャル・キャピタルを

「人々の協調行動を活発にすることによって、社会の効率性を高めることのできる『信頼』『規範』『ネットワーク』といった社会的仕組みの特徴」

と定義しています。

ソーシャル・キャピタルを介護予防に!

「ソーシャル・キャピタル」は、「介護予防」効果を高めることにも応用できます。 

たとえば、 

・スポーツクラブに参加している人が多い地域ほど、転倒者が少ない

とか、 

・趣味のサークル等に参加している人が多い地域ほど、うつ傾向が低い

といった内容は、すでに学術的な研究の成果として発表されています。

これらは、スポーツクラブや趣味のサークルへの参加行動が地域社会の絆を強め、ソーシャル・キャピタルを高めた結果と考えることができます。

こうした知見は、自治体の政策や人々の行動に結びつきやすい内容といえますね。

日本老年学的評価研究(JAGESプロジェクト)Webサイトのプレスリリースには、さらにいろいろな研究結果が発表されていますので、興味のある方はご覧ください。

まとめ

今回は、介護保険制度が「予防」を核とする制度となっていることをお伝えし、「介護予防」と「ソーシャル・キャピタル」という2つのキーワードをご紹介しました。 

今さらですが、介護保険は、 

「必要がなければ、使わないに越したことはない!」

 のです。

これが、介護保険制度との正しい向き合い方です。

そのほうが、あなた自身にとっても、社会にとっても幸せなことなのだと思います。

早期から「予防」の必要性を理解して意識し、具体的な行動につなげていただければ幸いです。

 

<参考文献>
介護予防マニュアル改定委員会,2012,「介護予防マニュアル改訂版」厚生労働省  http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/tp0501-1.html 

相田潤・近藤克則:健康の社会的決定要因(10)「ソーシャルキャピタル」,日本公衆衛生雑誌582):129-1322011.2 

稲葉陽二・大守隆・金光淳・近藤克則ほか,2014,『ソーシャル・キャピタル 「きずな」の科学とは何か』ミネルヴァ書房

 

この記事を書いた人

山村 靖彦名古屋事務所

コラバド副編集長。専門は社会福祉。主に、自治体の福祉関係調査や計画策定を支援している。 社会福祉士、専門社会調査士の資格を有する。

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