認知症予防に効果的なサロンとは? 事例から学ぶ介護予防政策

2017.02.20

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福祉のおはなし

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こんにちは。ライターの山村です。

以前の記事(「予防」を核とする介護保険制度と向き合う2つのキーワード!)でもご紹介しました、日本老年学的評価研究(JAGESプロジェクト)Webサイトには、介護予防についての研究成果がプレスリリースとして掲載されています。

ここには、本当に有効な情報がたくさん掲載されています。

でも、“研究機関が発する情報は難しい・・”というイメージがあるかもしれません。
実際、これらの情報は、そのまま現場に応用できるとは限らない場合もあります。

でも、せっかくの研究成果を現場で応用しない手はありません! 

今回は、たくさんある情報の中の1つ、『「憩いのサロン」※参加で認知症リスク3割減』(No:095-16-25)というプレスリリースを読み、そこから学べることを整理してみたいと思います。


※「憩いのサロン」は、高齢者の身近な健康づくりの場として、地域の高齢者が集まり、交流する場です。資料で取り上げられている愛知県武豊町の事例は、介護保険制度における介護予防事業として実施されています。

「憩いのサロン」参加で、認知症リスク3割減!

 

プレスリリースには、以下のような内容が紹介されていました。

介護予防を目的とした「憩いのサロン」への参加が、認知症の発症を予防するかどうかを検証しました。愛知県知多郡武豊町の高齢者約2,600人を7年間追跡し、追跡期間中のサロン参加が認知症の発症に与える影響を調べました。
その結果(中略)、年に4回以上のサロン参加は認知症の発症リスクを0.7倍に低下させていました。
町にサロンを設置し、軽い体操、おしゃべり、すごろくなどのゲームに参加してもらうことが、認知症の予防に結びつくことが示されました。

この記事は、とてもわかりやすいですね。このまま真似しても、同様の効果が得られるかもしれません。

ポイントを整理してみしょう。

①年4回以上のサロン参加で、認知症発症リスクが3割減!
②軽い体操、おしゃべり、すごろくなどへの参加が効果的!
③7年間の追跡調査で検証!

ということです。

①と②は真似できますが、③は少しハードルが高いでしょうか?

でも、追跡調査をしないと、サロンの効果を正しく検証することはできないのですね。

なお、武豊町の「憩いのサロン」については、町のサイトにも掲載されています。

サロンの設計には、ボランティアが参画!

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愛知県武豊町のサロンについては、2016年12月13日に東海市芸術劇場多目的ホールで行われた「厚生労働科学研究・研究成果等普及啓発事業による成果発表会」でも紹介されていました。

そこでは、「プロセスを重視した支援が必要」と報告されています。

武豊町のサロンは、

・住民(ボランティア)参加によるワークショップで、サロンそのものを設計した
・開設後のサロンは、ボランティアが運営している
・1年目は地域包括支援センター職員がフォロー、2年目以降は町の委託事業としてボランティアが運営

などの特徴があります。

サロンの設計に住民が参画している点は重要ですね。
開設後の運営に対する当事者意識の向上にもつながります。

そして、既に13会場が開所されているとのこと。
各会場で月に1~2回開催され、1回あたり60名程度の参加者があるという充実ぶりです。

これは、住民参画と当事者意識向上がうまく機能した事例だと考えられます。

前項でみた3つのポイントを真似するだけでなく、サロンづくりのプロセスを重視する必要がありそうです。

サロンを通じて「他人の役に立っていると思う」人が増えている!

また、先述の発表会では、サロン参加当初と比べてサロン参加後のほうが「他人の役にたっていると思う」と感じている人が増えていることが発表されました。これは、サロンを開設・運営しているボランティアだけでなく、サロンへの参加者にも同様の変化がみられたとのことです。

サロンへの参加が、このような心理社会面での変化をもたらすよう作用したことが、認知症発症リスクの低下につながっているのかもしれません。

まとめ(この事例から学べること)

この事例から学べることをまとめてみましょう。 

①サロン実施の基本仕様

年4回以上の参加、軽い体操やおしゃべりなどの楽しいプログラムの実施など、サロンの効果的な基本仕様が参考になります。 

②サロン開設までのプロセスが大切

サロン開設という課題への住民参画プロセスを大切にして、開設後の運営における当事者意識を高めることの大切さがわかります。 

③「人の役に立っている」という心理社会面の変化が大切

武豊町の事例では、サロンへの参加自体が心理社会面の良好な変化を引き出しています。サロンの設計や運営に参加していることも、こうした心理社会面の変化と無関係ではないものと思われます。 

④追跡調査で検証する

追跡調査では、同じ対象者に2回、調査協力をお願いします。少し手間がかかりますが、サロン参加当初と参加後などに調査をお願いし、その結果を比較することでサロンの効果を検証することができます。 

このように、研究機関が発表している情報を現場の施策や取組に活かすことができる要素は、まだまだたくさんあると思います。 

今後も、そうしたお話を紹介していきたいと思います。

 

<参考資料>
『「憩いのサロン」参加で認知症リスク3割減』Press Release No:095-16-25 2017 1 月発行

 厚生労働科学研究・研究成果等普及啓発事業による成果発表会『社会参加促進による認知症予防』ポピュレーションアプローチによる認知症予防のための社会参加支援の地域介入研究班 20161213

 

この記事を書いた人

山村 靖彦名古屋事務所

コラバド副編集長。専門は社会福祉。 主に、自治体の福祉関係調査や計画策定を支援している。 社会福祉士、専門社会調査士。

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