抽象的な概念を可視化するマーケティングリサーチ

こんにちは、ライターの〝ミスターMR“です。
前回に引き続き、マーケティングのお話しをします。

マーケティングプロセスとマーケティングリサーチ

前回お話したように、マーケティングリサーチによって、自社の製品やサービスのポジションを明らかにすると、競合に比べ優位性があるかどうかを理解することができます。

ここで言う「優位性」とは、「ターゲットとして想定している消費者が、自社の製品やサービスに対して、お金を払ってでも得たいと思う便益(「ベネフィット」とも言います)を感じていること」を意味します。自社の製品やサービスの「競合と比較した優位性」は、マーケティングフレームワークのひとつである「STP(S:セグメンテーション/T:ターゲティング/P:ポジショニング)分析」によって導き出される戦略的思考の結果でもあります(表1参照)。

企業や団体は、ターゲットの消費者に、自社の製品やサービスの存在を知ってもらい、特徴を理解してもらい、良好なイメージを持ってもらい、興味を持ってもらい、好きになってもらい、そして、最終的に利用したい/買いたいという気持ちになってもらうために、様々なマーケティング活動を行っています。

それらのマーケティング活動の構成要素は「4P」=「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販促)」の4つの組み合わせで成り立っています。

近年では、プロダクトアウト(作り手が良いと思うものを作って売る)からマーケットイン(顧客が望むものを作って売る)の発想へとシフトしており、顧客視点に立った「4C」=「ProductからCustomer Valueへ」、「PriceからCostへ」、「PlaceからConvenienceへ」、「PromotionからCommunicationへ」も4Pと並行して考慮する必要があります(表2参照)。

上記の「STP」から「4P/4C」へと至るマーケティングプロセスは、近代マーケティングの父、マーケティングの大家と称されるフィリップ・コトラーが提唱したフレームワークであり、その後に行われる「Implement(実行)」から「Control(管理)」へ至るプロセスも含め、マーケティング活動はマーケティングリサーチを起点として行われるのです(図1参照)。

これら一連のマーケティング活動が対象とするのは、ブランドや製品・サービスのイメージといった抽象的な概念であったり、興味・関心や好意、購入・利用意向など顧客の気持ちであったり、これらはすべて我々の目には見えないものです。

あるブランドを好きになったり、そのブランドに対して固有のイメージを抱いたり、また店頭でパッケージデザインに惹かれて思わず製品を手に取ってしまったり、予定していないのに衝動買いをしてしまったりという消費者の行動は、意識的に行われるものではありませんし、消費者は購入や利用の際の自分の考えを上手に表現できるものでもありません。
すべて潜在意識がある瞬間に気持ちとなって顕在化したり、行動となって表れたりするのです。

マーケティングリサーチと投影法の関係性

それでは、マーケティング活動を行う際に、ブランドイメージなどの抽象的な概念や消費者の潜在意識など、目に見えないものをどのように捉えていけばよいのでしょうか。

すべての事象とまでは言えませんが、目に見えないものをある程度可視化するために行われるのが、マーケティングリサーチであると私は考えています。

ここからは、私が尊敬してやまない、ある企業のマーケティングリサーチ担当の方が常日頃から話されていた、「マーケティングリサーチと投影法」について、皆さんに是非紹介したいと思います。

例えば、マーケティングリサーチで明らかにしなければならない「ブランドイメージ」や「ブランドを好きな理由」、「買いたいという気持ち」などの対象を、普段は目に見えないが、光を当てた時にだけ影が映し出されるものとして想像してみてください。
もちろん、光の強弱によって影の輪郭がクリアになったりぼやけたり、光の角度によって、影の幅が拡がったり狭くなったり、影の長さが伸びたり縮んだりします(図2参照)。
光を当てることによって影を映し出し、映し出された影によって、対象の形や大きさを推察していくのです。
これは心理学の投影法であり、マーケティングリサーチの分野では、定性調査の技法として広く用いられています。

私は、定性調査だけではなく、マーケティングリサーチそのものが投影法であるという考え方に賛同しています。なぜなら、マーケティングリサーチで理解しなければならない対象のほとんどが、目に見えない抽象的な概念だからです。

光の強さだけではなく、あらゆる角度から幾度も幾度も光を当て続けることによって、実態に近い形状が影として映し出されていくその様は、多面的にリサーチすることにより、データの精度を高めていく作業そのものです。
つまり、光の当て方をどのようにするか考えることが「調査設計」であり、光の強さや角度が「調査手法」、映し出された影が「収集されたデータ」、その影から実態を推察していく作業が「分析・レポーティング/示唆・提言」に当てはまり、自社製品・サービスのあるべき姿の実現へとつながっていくのではないでしょうか。

昨今は、単純化・簡素化されたモデルだけでマーケティングをコントロールする風潮も多々見受けられますが、マーケティング対象にきちんと光を当てることはもちろん、個々の様々な調査データの積み上げでマーケティングをプランしていくことの大切さも忘れないようにしたいものです。

マーケティングリサーチが導き出す消費者インサイト

昨今、「インサイト(Insight)の抽出・導出」といった言葉がマーケティングの世界でとても流行しています。
そもそも「インサイト」は、英語で『洞察』や『看破』という意味であり、「アウトサイト(Outsight)」の反意語です。
「アウトサイト」は『(外界の)物事の知覚』という意味があります。
アウトサイトは目に見えるものを対象としていますが、インサイトは目に見えないものを洞察し看破して、実態を把握していくものです。

インサイトをマーケティングの世界に置き換えて考えると、それは「消費者の本音/心の声」であり、目に見えるものではありません。自社の商品やサービスに対する消費者の本音や心の声を導き出すには、その潜在意識に光を当て続けることによって、その影を映し出し、実態を推察していくこと、そして、製品やサービスをあるべき姿に近づけていくこと、それがマーケティングリサーチの使命なのではないでしょうか。

次回以降は、最近のマーケティング事象についての考察を踏まえつつ、マーケティングリサーチの具体論にも踏み込みたいと思います。

まとめ

近代マーケティングの父、フィリップ・コトラーが提唱する「STP→4P/4C→Implement(実行)→Control(管理)」のマーケティングプロセスは、常にマーケティングリサーチを起点として行われるものである。 

マーケティングプロセスにおいて実行・管理する対象は、ブランドイメージや製品、サービスに対する興味・関心、利用や購入意向など、消費者が抱く気持ちや心に潜む意識であり、それらは我々の目に見えないものである。 

それら、抽象的な概念を可視化するのがマーケティングリサーチであり、目に見えないものに光を当て続けることによって、その形や大きさを映し出し、実態を明らかにしていく。 

本音や心の声といった消費者の潜在意識に光を当て続けて可視化することは、まさに消費者インサイトを導き出すことそのものであり、それはマーケティングリサーチの使命である。

 

この記事を書いた人

ミスターMR営業企画本部

突如現れた謎のライター“ミスターMR”。 当社所属のマーケティングリサーチャーであるということ以外、詳細は不明。

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