無関心ではいられない! 『第8期介護保険事業計画』のこと

2019.08.26

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福祉のおはなし

こんにちは、ライターの山村です。
唐突ですが、皆さんはご存知でしょうか?
実は、まさにこれから、全国の自治体は『介護保険事業計画』の見直しを行う時期に入っていきます。
この記事を書いている2019年8月は、『第7期介護保険事業計画』(2018年度〜2020年度)のちょうど中間にあたり、2021年4月からは、新たに策定する『第8期介護保険事業計画』がスタートすることになります。

「行政との上手なおつきあいを提案する」当メディアとしては、こうした情報にこそ多くの方に目を向けていただきたいと思っています。
そこで今回は、一般市民の皆さんが『介護保険事業計画』とどう向き合っていったらいいのかについて、考えてみたいと思います。

「介護保険事業計画」とは?

まずは、「介護保険事業計画とは何?」ということを押さえておきましょう。

介護保険事業計画は、介護保険法第117条に基づき、介護保険制度の保険者である市町村が策定する計画です。
3年を1期とする(つまり3年ごとに作る)計画と定められています。
介護保険制度は、市町村を保険者とする公的な保険制度で、40歳以上の住民が被保険者となります。
65歳以上の方が「第1号被保険者」、40~64歳の方が「第2号被保険者」となります。
被保険者は、保険者に“保険料”を支払い、介護が必要となった際には保険給付を受けてサービスを利用することができるしくみです。

図にもあるとおり、『介護保険事業計画』には、日常生活圏域の設定、介護サービス量の見込み(年度別、種類別)、入居施設等の必要定員(年度別、種類別、圏域別)、地域支援事業の量の見込み等を記載することとなっています。

つまり、計画の期間(3年間)に、どれくらいの人がどのようなサービスをどれくらい使うのかを想定して、その運営に必要な金額を算出するのが、事業計画を策定する目的の1つです。

そして、算出された金額を根拠とする“保険料額”を定めます。
市町村が「介護保険事業計画」の策定と連動して定める保険料額は、厳密には「第1号被保険者」が保険者(市町村)に納める保険料額です。
したがって、65歳以上の方にとっては、お住まいの市町村がどのような『介護保険事業計画』を策定し、どのような“介護保険料”を設定するかは、ご自身の生活に直結する内容といえるのではないでしょうか。
決して“無関心”ではいられない内容ですね!

介護保険料は、どれくらいの水準?

ところで皆さんは、全国の市町村の介護保険料がどの程度の水準にあるのかご覧になられたことがあるでしょうか。
第7期の介護保険料の基準月額(平均的な所得水準の方の保険料の月額)の全国平均は5,869最も高い保険者が9,800最も低い保険者が3,000です。 

お住まいの市町村の保険料の基準月額はおいくらでしょうか?

全国の保険料基準月額をグラフにすると、下図のような分布となります。(オレンジ色の線が「第7期」)
これを見ると、保険料が5000円〜5999円という保険者が最も多いことがわかります。

ちなみに、第6期の介護保険料の基準月額の全国平均は5,514円でしたので、第7期における増額は354円でした。
6000円未満のランクでは、第6期よりも第7期の保険者数が少ないのに対し、6000円以上のランクでは第7期の保険者数が多くなっています。
こうしてみると、保険料基準月額6000円未満の保険者は少数派となりつつあり、全国平均水準は5000円台から6000円台へと推移していくものと考えられます。 

高齢化の進行とともに保険料が高くなるのはやむを得ないことかもしれませんね。
でも、全国的な水準をデータで把握しておくことは、お住まいの自治体の『介護保険事業計画』を見ていく上でも重要な情報になると思います。

『介護保険事業計画』に関心を持とう!

今回ご紹介した情報を見ていただくだけでも、お住まいの市町村の『介護保険事業計画』に無関心ではいられなくなったのではないでしょうか。
そこで最後に、『介護保険事業計画』の策定に関わることができる具体的な方法や機会についてお話します。

①“パブリックコメント”に意見を寄せる

ほとんどの自治体では、計画案が完成した時点でそれを公開し、広く市民の意見を求める機会を設けています。
これをパブリックコメントといいます。
スケジュールの関係上、計画が公開される時期は秋から年度末に集中しがちですので、例えば11月から2月あたりの広報や自治体ホームページを見ていただければ、パブリックコメントの機会に触れ、計画案に対する意見を寄せることができます。

なお、必ずしも“意見を寄せる”ことが必須ではありません。
どんな計画が策定されているのか、目を通していただくだけでも十分です。
まずは、関心を持っていただくことが大切です。

②アンケート調査には真摯に協力する

介護保険事業計画の策定の際には、アンケート調査による現状やニーズ把握が行われます。
アンケートに協力するだけでも、計画策定に貢献したことになりますから、ぜひ積極的に協力してほしいと思います。
また、アンケート調査の結果は、自治体ホームページ等で公開される場合が多いので、こちらもチェックしていただけると良いと思います。

③「策定委員会」に参画する

計画を策定する場合、原則として「策定委員会」などの審議機関が設置されます。
自治体によっては、委員の一部に“公募枠”を設けている場合があります。
人数は限られますが、これに応募すれば市民代表として“策定委員”になることができる可能性がありますので、思い切って応募してみるのも1つの方法です。
応募の機会については、広報や自治体ホームページに情報が掲載されるはずなのでチェックしましょう。

④「策定委員会」を傍聴する

「策定委員会」は原則として公開されるところが多いので、希望すれば“傍聴”が可能です。
傍聴者は意見を述べることはできませんが、策定委員会における協議を実際に聞くことができる貴重な機会です。

⑤国や県の情報にも目を向ける

介護保険事業計画の策定は、国の基本指針に則って行われますので、国や県の情報にも目を向けていただくと良いと思います。
たとえば、介護保険事業計画の関係では、厚生労働省ホームページに「第8期介護保険事業計画作成に向けた各種調査等に関する説明会」として、関係資料が公開されています。

⑥地域で、みんなで考える!

最後に、最も大切なことは、地域で、みんなで考えることです。
特に、介護保険の分野では、地域で共に生活していくことができる社会をつくろうという大きなテーマがありますので、地域づくりの方向性をみんなで考えることはとても大切です。
市町村では、「地域懇談会」「ワークショップ」「ヒアリング」など、様々な形で計画への参画機会を作ろうとしています。
そうした機会も活かしていただければよいと思います。

今回ご紹介した情報は、介護保険事業計画の策定に限ったことではありません。
他の多くの計画策定においても、同じような手法がとられている場合がほとんどです。
これをきっかけに、1人でも多くの方が行政の情報に関心を持っていただければとても嬉しいです。

 

この記事を書いた人

山村 靖彦

コラバド編集者。専門は社会福祉(社会福祉士)。 数多くの行政計画策定を支援してきた経験から、いろいろな提案をしていきたいと考えています。

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