台風15号上陸-大きな被害を受けた牧之原市に思いを馳せる
2025年9月5日、台風15号が日本列島に上陸し、各地に被害をもたらしました。
この台風によって最も大きな被害が発生したのが、静岡県中部の海沿いにあるまち、牧之原市です。
筆者は入社直後から長年牧之原市の業務を受託し、かかわりを持ってきたことから、今回の出来事に大いに心を痛めました。あの日、どんな恐怖が牧之原市を襲ったのか、思いを馳せながら今回の記事を書いています。
突然の台風発生、そして上陸
この台風15号の特徴の1つは「日本列島のすぐそばで発生し、そのまま上陸したこと」ではないかと筆者は考えます。
たいていの台風は「日本列島の遥か南の方で発生し、接近してきて、その一部が上陸する」というのがよくみられる進路です。
しかし、今回の台風15号は違いました。

(出典:気象庁「台風経路図」https://www.data.jma.go.jp/typhoon/route_map/index.html)
沖縄県より北で発生し、宮崎県のすぐ横を通過したのち、高知県に上陸しています。
台風が発生したのは、本州に上陸するわずか2日前でした。
台風に備えられる時間が限られていたことも、今回の被害拡大の一因かもしれません。
風速75m毎秒の暴風が、市民が暮らすまちを襲う
静岡県内では、5日未明から各地で激しい雨が降りました。同じ場所で非常に激しい雨が降り続ける線状降水帯が発生し、「記録的短時間大雨情報」が6回にわたって発令されました。
大雨の影響により東海道新幹線・JR東海道線も午後から一部で運転見合わせになり、帰宅に困る人が続出しました。(あれ?この間もこんなこと書いたような…)
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そして牧之原市では午後、竜巻とみられる突風が発生し、甚大な被害をもたらしました。その風速は約75m毎秒に達するもので、国内最大級の規模だったと推定されています。
今回の突風は、竜巻のランクを表す「JEFスケール(日本人博士が開発した「Fスケール」を元に、日本で改良・運用されている評定指標)」において、JEF0~5のうち3に相当するものでした。
なお、今回の突風が「国内最大級の規模だった」とみられているのは、JEF4及び5に相当する突風はこれまでに観測されたことがないためです。
出典:気象庁「日本版改良藤田(JEF)スケールとは」(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/tornado1-2-2.html)
参考:気象庁「歴代全国ランキング」
(https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/rankall.php?prec_no=50&block_no=47654&year=2025&month=9&day=5&view=)
ちょうどその頃、私は牧之原市から35kmほど離れた静岡市内の事務所でいつも通り勤務していました(勤務中にJR東海道線が運転見合わせになって、出社したのを悔やんだのはここだけの話)。確かにその頃は雨脚が強くなり、雷が鳴り響くようになった時間帯でした。
「急に雨が強くなって、台風らしくなってきた」なんて雑談をしていましたが、すぐ近くの自治体でこのような災害が発生しているとは、当時は思ってもいませんでした。
何年も筆者と仕事を共にしているスタッフさんは、毎年牧之原市の業務を受託していることもあって、牧之原市の公式LINEを友だち登録しています。そこには台風15号が上陸した5日以降、牧之原市からの何通もの災害情報が届いていました。

【立て続けに届いていた牧之原市からの災害情報。これはごく一部】
いかに差し迫った状況であったかが伝わってきます。
明らかになる被害と、復旧への道のり。現地にも行ってみた
その夜から、牧之原市(と隣接する吉田町)の被害の様子が連日ニュースで取り上げられました。
雨風で全く見えない視界や、外壁・屋根などが損傷した建物の数々、垂れ下がる電線、風に煽られ横転した自動車、そして停電…

【写真はいずれも牧之原市より提供。全て9月5日(発災当日)に撮影】
筆者が仕事で事務所から牧之原市役所に向かうまでの道、牧之原市の主要道路(国道150号)の様子も映されました。見慣れた街並みで甚大な被害が発生したことに大きなショックを受けました。
毎日ニュースを見て行動を起こさずにいられなくなった筆者は、災害発生から5日後の9月10日、牧之原市へと状況を観に行ってきました。
まず目についたのは、骨組みが露出したビニールハウスの多さでした。また、瓦が飛ばされ、ブルーシートを被った住宅も目立っていました。翌日には雨が降る予報が出ていたので、その備えでもあったのでしょう。

【牧之原市役所・榛原庁舎】
市の主要道路の周辺を見て回ったのち、牧之原市役所に到着。顔なじみの職員の方にお見舞いのご挨拶をしました(もちろん、非常事態で忙しいでしょうから手短に)。職員のみなさんも、交代でがれきの撤去やボランティアの手伝いなどに出動されるとのことでした。
続いて、役所から1.5kmほど離れた静波海水浴場に移動。ここは、今回の災害で発生した災害廃棄物の仮置場として使用されていました。各市区町村では、このように広い駐車場やグラウンドなどの敷地を持つ施設が災害廃棄物の仮置場として選定されています。

【静波海水浴場に持ち込まれた災害廃棄物。
住宅の一部とみられる木くずやガラス片、浸水で使えなくなった寝具や家電などが目立つ】
今回の災害では、この海水浴場以外にも災害廃棄物が持ち込まれている仮置場があります。いかに多くの市民の生活に影響を与えたかがうかがえます。廃棄物の向こうに海が見える構図は、撮影していて切ない気分になりました。
最後に、特に被害の大きかった住宅地(細江地区)と地区のコミュニティセンターへ。ここにも顔なじみの職員の方がいましたので、お見舞いのご挨拶。
当然ですが、主要道路の近辺以上にブルーシートのかかった住宅が目立っていました。そして、まだ通行止めが解除されていない道路が少なくなく、生活が元に戻るまでに多くの時間を要することが感じられました。
臨時の食糧支援を行っている施設を訪れ、出発前に購入した少しばかりの飲料水を寄付して、筆者はまちを後にしました。
いざという時に備えて、知識を蓄えておこう。被災地のためにできることも考えてみよう
自然災害は、私たちの生活を一変させてしまいます。そんな当たり前のことが、改めて身に染みる体験でした。
今回のように突然発生する竜巻から瞬時に身を守るのは、容易ではないように感じるかもしれません。だからこそ、平常時に必要な知識を身につけておくことが大切です。
竜巻が発生した時に望ましい行動について、以下にまとめてみました。
①竜巻の発生に備えて…
・屋外の飛ばされそうなものを屋内に片づける
・施錠をしたり飛散防止フィルムを貼ったりするなど、窓や雨戸を補強する
基本は台風への備えと同じですね。

②屋内にいるときに発生したら…
・窓やカーテンを閉める。また、窓やドアから必ず離れる
・1階(可能な限り窓のない部屋)に移動する
・丈夫な机やテーブルの下に入るなどして頭を守る
③屋外にいるときに発生したら…
・頑丈な構造物の物陰に入って身を小さくする
・倒壊の危険があるため、電柱や樹木から離れる
出典:気象庁「竜巻から身を守るには」
(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/tornado4-3.html)
いざという時のための参考になれば幸いです。
最後に、被災された人々の助けになるために、自分ができることも一度考えてみたいところです。
最近では、ふるさと納税の仕組みを活用して支援金を寄付することもできるそうです(私も今回はじめて知りました)。牧之原市や吉田町では、既に受け付けが始まっています。
以前よりもずっと、助けになるための手段は充実しています。私もできることから行動に移してみたいと思います。
この記事を書いた人

伊藤静岡事務所
静岡県出身。主に世論調査と行政計画策定支援を通した行政のお手伝いをしています。 趣味は音楽を聴くこと、コレクションすること、北米プロスポーツの情報をチェックすること。足の遅さと腰の重さに定評がある。