リサーチャー必見! 調査の価値を高める調査票設計の基本とは?

2018.01.16

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統計のおはなし

調査票は調査において最も重要

ライターの田原です。
今回は、ライトな記事ではなく、アンケート調査を仕事にしているリサーチャーっぽい記事を書きます。

前回、『リサーチャーあるある』の記事において、
リサーチャーはアンケート調査票の設計に細心の注意を払っていると記載した通り、調査において調査票の設計は極めて重要です。

リサーチャーになった1年目に、上司から、アンケート調査は調査票を作成した段階で仕事の8割が終わっているということを言われましたが、この言葉の重みをいつも感じながら調査票を作成しています。

今回は、この調査票の設計について、記載していきたいと思います。

良くない質問

アンケート調査は、紙とペンさえあれば調査票が作れるため、簡単に行いやすい調査です。

しかし、簡単に行いやすいからといって、あまり考えずに質問を作ってしまうと、正しいデータが得られず、調査の意味が激減してしまうこともあります。

あなたは、以下の質問を見て、どのように思うでしょうか。

「Q あなたの好きなスポーツについて教えてください」
1.サッカー
2.野球
3.テニス
4.バスケットボール
5.卓球
6.スキー
7.スノーボード
8.柔道
9.相撲
10.水泳
11.バレーボール
12.ラグビー
13.弓道
14.ゴルフ
15.体操
16.馬術
17.フットサル

選択肢については、僕がスポーツとして思いつくものを思いついた順に並べたものです。

ここで、一つ考えてもらいたいことがあります。 

全ての選択肢に目を通したでしょうか?

おそらく、選択肢が17個もあると、全ての選択肢を読むのが面倒だと思った方が多いかと思います。
また、この例では単語なので読むのは簡単ですが、もしこれが少し長い文章だとしたら、17の文章すべてを読むでしょうか。

では、どうすれば良いのか?

先ほどの質問は、選択肢が多すぎるという良くない例です。
選択肢が多いと、選択肢に目を通してもらえず、回答者が回答したいと思う選択肢にたどり着くまでに時間がかかり、場合によっては回答することをあきらめることにもつながります。

こういったことを回避する方法は、調査目的を明確にして、調査で明らかにする課題を設定した上で調査票を設計することにあります。

それは、
「この質問では何を知りたいのかを明確にすること」

そして、
「答えを知るために適した質問形式を選択すること」

です。

質問を作成する前には、まず、何を知りたいのかを明確にする必要があります。先ほどの例では、「好きなスポーツは何か」ということですね。

次に、好きなスポーツを知るためには、どのような質問方法が良いかということを考える必要があります。先ほどの例では、思いつくスポーツを羅列し、選択肢にしましたが、ここが良くない点でした。

スポーツには、数多くの種類があります。先ほどの17個の選択肢でもスポーツすべてを網羅できていないのは確実です。このような場合には、選択肢を設けた質問とはせず、好きなスポーツを自由回答形式(回答者に記載してもらう形式)で回答してもらった方が良かったと考えられます。

このように、アンケート調査における調査票を設計する際は、全ての質問において

「この質問では何を知りたいのかを明確にすること」

「答えを知るために適した質問形式を選択すること」

の2つをきちんと行うことが重要です。

一つ目の「この質問では何を知りたいのかを明確にすること」は、心がけるだけで可能となることですが、二つ目の「答えを知るために適した質問形式を選択すること」は、なかなか容易なことではありません。

先ほどの例は、選択肢が多くなることが想定される質問だったので、自由回答とする方が良いと書きましたが、選択肢が多くなることが想定される質問全てを自由回答にすればよいというわけではありません。選択肢をいくつか用意し、「その他」を設けることが良い場合もあります。「答えを知るために適した質問方法」については、明確な答えが無く、質問の内容に応じて、使い分ける必要があるのです。

まとめ

アンケート調査は紙とペンがあれば実施できる調査方法ですが、調査票の設計を間違えると、適切なデータが得られず、調査の価値が激減することにもつながります。

調査票を設計する際は、細心の注意を払い、質問全てを吟味していく必要があります。

街中や、自宅に届く調査票を見た際は、調査票を作った人が、時間をかけて、大切に作り上げた質問の集まりなのだなと思ってもらえればうれしい限りです。

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この記事を書いた人

田原 歩静岡事務所 企画課

最強の男

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