持続可能な開発目標SDGsと地方自治体について
ライターの中村です。
今回は、注目され始めている「SDGs」についてご紹介します。
SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは何でしょう?
2017年12月に発表された2018年度の政府予算には、地方創生に向けた自治体SDGs推進事業が新たに設定されています。
この、SDGsとは何でしょう。
2015年9月、国連持続可能な開発サミットで先進国を含む国際社会全体の開発目標となる持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)が2030アジェンダとして採択されました。
この持続可能な開発目標の略称がSDGsで、2030年を期限として17の目標が設定されています。
目標13の「気候変動」は、2015年12月の第21回気候変動枠組条約締結国会議(COP21)のパリ協定でその内容が具体化されており、国際的に重要な目標になっています。
なお、SDGsの各目標には進捗を測る指標があり、たとえば目標13「エネルギー」の再生可能エネルギーの大幅拡大であれば、「エネルギー消費全体における再生エネルギーの比率」という指標があります。
以下が、SDGsの17の目標です。
日本のSDGs
日本政府は、SDGsの17の目標達成のために国内での枠組みを確立することが必要になっています。
このため、2016年5月にSDGs推進本部を設置し、同年12月、8つの優先課題と具体的施策をSDGsの実施指針の中で発表しました(表2)。
表2 政府のSDGs実施指針の8つの優先課題と具体的施策
(出所)SDGs推進本部「SDGs実施指針」2016年12月
国連の2030アジェンダでは、自治体はSDGs実施の不可欠な主体でありパートナーと位置付けられています。このためSDGs実施指針には、SDGsを全国的に実施するため、広く全国の地方自治体及びその地域で活動するステークホルダーによる積極的な取組を推進することが不可欠であるとの記述があります。
実は、政府の施策としては、すでに「環境未来都市」構想があり、環境・社会・経済の3つの側面価値創出による都市活性化を志向していて、SDGsの先行例と言われています(図1)。
「環境未来都市」構想は、国の新成長戦略(2010年)の国家プロジェクトの一つで、環境と超高齢化対応を必須のテーマとし、これに地域の独自テーマを追加して取組を推進するもので、現在11都市・地域が指定されています(表3)。
北海道下川町は人口3,400人、高齢化率39%の小規模過疎地域ですが、昨年12月に開催された第1回ジャパンSDGsアワードで内閣総理大臣賞を受賞しています。条例に「持続可能な地域社会の実現」を位置づけ、バイオマス原料製造による熱供給システムを核としたコンパクトタウン化を推進し、地方創生のモデルになり得ると評価されています。
このように小さな自治体でもSDGsの推進は可能です。
自治体SDGs推進事業について
2017年6月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生基本方針2017」において、地方公共団体における持続可能な開発目標(SDGs)の推進が盛り込まれました。環境未来都市を発展させたSDGs未来都市(仮称)が構想され、財政的な支援が行われるようです。
2018年度予算の「地方創生に向けた自治体SDGs推進事業」では、地方創生に資するSDGsの取組を公募し、優れた取組を提案する都道府県、市町村をSDGs未来都市として選定し、先導的な取組には「自治体SDGsモデル事業」として資金的な支援を行うことになっています。
自治体SDGs推進事業のイメージとしては、①再生可能エネルギーと次世代自動車を組み合わせた都市のエネルギーマネジメントシステムの構築、②食品ロスを抑えるための先進的総合的な取り組み、③自治体が主導する環境関連の途上国への技術協力事業等が事例として示されています。
自治体は、SDGs活用によりSDGsの目標、指標を利用し、持続的なまちづくりのビジョンや目標を作ることが可能になります。またSDGs目標に向けた行動により自治体は客観的な自己の魅力の発見や劣った部分の改良方法を理解できるようになります。
内閣府が昨年10月に行ったSDGsに関する自治体向けアンケートでは、SDGsの認知度は46%、SDGsの取組状況は35%、地方創生に向けた自治体SGDs推進事業の活用意向は40%となっています(表4)。このようなことから、SDGsに取組む自治体が今後、増加することが予想されます。
まとめにかえて
持続可能な開発目標というと、政府の世界的な環境問題への対応を想像してしまいます。
しかし、グローバル化した社会では、地方自治体の職員がアジアの各国で水道・下水道、交通、教育、福祉事業などの分野で幅広く指導をしています。
また、国内でも、女性の社会進出支援、子ども貧困対策、防災、省エネルギー、高齢化への対応等幅広い範囲でSDGsにある内容を計画的に進めて行くことが必要になっています。
このような多様な課題に、的確に対応していくためには、計画の進捗を把握し、フォローアップしていく自治体の体制も必要になっています。
自治体はSDGsに取組むことで、行政目標を設定し、その進捗を管理するガバナンス手法を確立することが可能となります。
地方創生は地方の自立性や官民のパートナーシップにより計画的な地方活性化を目指すものですが、自治体SDGsは、それを後押し、地方の自立的な活性化を進めていくと考えられます。
<参考文献・資料>
・内閣府地方創生推進事務局「地方創生に向けた自治体SDGsの推進について」2017年12月
・SDGs推進本部「SDGsアクションプラン2018 」2017年12月
・内閣府地方創生推進事務局「SDGsに関する自治体アンケート調査(地方創生に向けたSDGsを活かしたまちづくり)」2017年10月
この記事を書いた人
中村 理史営業企画本部
専門は産業経済です。 自治体、証券会社、物流会社の調査部門を経験しましたので、調査担当分野の多様性が強みです。 営業企画本部で勤務しています。