行政の計画策定を学ぼう! 〜2020年度の新入社員研修レポート~

2020.07.07

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こんにちは、ライターの山村です。
2020年度の新入社員の皆様は、入社時期と新型コロナウイルス感染症対策とが重なり、苦労されたのではないでしょうか。
当社も、4月の緊急事態宣言の発令後は、全体研修が実施できない状態となりました。

そこで、私が所属する部署では、5月の連休明けから月末までの期間を使って独自の研修を実施しました。
私は、当社の「世論・計画分野」に関する研修を担当しましたので、今回はその内容をご紹介いたします。

当社の“世論・計画分野”とは?

まずは、当社の3つの事業分野の1つ、「世論・計画分野」の説明からはじめました。

世論・計画分野は、主に国や地方自治体などの公的な機関を顧客とする仕事を行っている分野です。
アンケート調査をはじめとする「各種調査業務」、行政計画の策定を支援する「計画策定業務」、介護保険や国民健康保険などの「データ分析業務」などが主な内容です。
その他、特定の行政課題の解決に特化した具体的な事業(たとえば「発達障害の早期アセスメントの実現」など)の提供も、世論・計画分野の業務として位置付けています。

行政の計画策定業務を体験しよう!

今回は、「2日間」という時間を使い、世論・計画分野の主要業務である“行政計画の策定”を体験するプログラムを実施しました。
2日間のメニューは以下のとおりです。

以下、研修内容の一部をご紹介いたします。

「計画」とは、どういうもの?

1つめのプログラムである「Ⅰ 計画をつくる」では、“そもそも計画ってどんなもの?”ということを学びました。

 「計画」ができた状態とは、どのような条件が充足された状態を指すのでしょうか?

よく言われるPDCAの「P」がPLAN、すなわち「計画」ですね。
この「P」が持つべき要素とは何なのでしょう?(この点については、私の過去の記事でも触れています。『参照:「これからの「総合計画」を考える 〜形骸化しない総合計画とは?~」』)

過去の記事にも書きましたが、計画には「目的」「手段」が明記されている必要があります。
さらに、目的の背景には「課題」があり、その課題を解消することが「目的」です。
そして、課題の解決のために行うことが「手段」です。

これは、身近な例で考えてみると、わかりやすいと思います。
たとえば、ある人が、“今月のお小遣いの残りが少なくて困っていた”とします(“私”のことではないですよ・・)。
これは、当事者にとっては客観的事実に基づく「課題」です。
これを踏まえた上で、“今月の残りの期間、毎日お昼を食べる”という「目的」を掲げ、その達成のための「手段」として“毎日弁当を作って持参する”ことにしました。
目的と手段が明確化されていますから、これは問題解決のための計画に必要な要素を満たしています。

弁当の材料費がどこから出るのかという疑問はありますが、この「計画」を「実行」した結果、月末まで毎日お昼をいただけたとしたら、この「計画」は“成果をあげた”といえますね。

 PDCAサイクル」のしくみ

「計画」を「実行」した成果の検証プロセスは、PDCAの「C」(Check)にあたります。
これは、「実行」の結果と、計画に明記した「目的」との一致の検証です。

 先ほどの例では、“毎日お昼を食べる”という「目的」と、“毎日お昼をいただけた”という「結果」が一致しているので“成果があった”と評価できるわけです。

 「実行」の結果と「目的」が一致していないということは、当初の「課題」が解消されていない状態ですから、目的の達成のために再度計画をつくる等の取り組みが必要となります。

これが、“PDCAを回す”ということです。

ロジカルシンキングを学ぼう!

さて、ここまでは、計画に必要な要素と、PDCAのしくみについて見てきました。
次のプログラムは「Ⅱ ロジカルシンキングを学ぼう」です。

成果があがる計画を作るためには、計画の要素である「課題」「目的」「手段」が論理的につながった構造を実現する必要があります。
つまり、客観的にみてこの「手段」がこの「目的」の達成に効果的であるという関係を実現する必要があります。
そのために必要なスキルがロジカルシンキングです。
ロジカルシンキングのフレームワークを多く知っておくと、計画策定には大変役に立ちます。

今回の研修では、伝統的なフレームワークである「演繹法」「帰納法」に加え、ピラミッド・ストラクチャー(ロジック・ツリー)MECE(ミーシー)、当社でもよく使っているSWOTMATRIXを取り上げました。

◎演繹法

「演繹法」はロジカルシンキングの基本です。
「前提ルール」と「客観的事実」の情報があれば、必ず「結論(結論行動)」が得られるというものです。

たとえば、

前提ルール :「炭水化物の過剰摂取は、糖尿病のリスクを高める」
客観的事実 :「ごはんをおかわりする女性は、糖尿病になるリスクが高い」
結論(行動):「ごはんは、1食あたり1杯までにしよう」

という形ですね。
客観的事実は、実際に観測されているものです。
結論は、単なる論理的帰結としての表現よりも、“結論から得られる行動”として表現すると、計画などで活用しやすくなります。

演繹法は、明快な結論が得られますが、前提ルールが誤りだと結論も誤りとなります。
上記の例では、病気に関する研究が進むことにより前提ルールが変わる可能性もありますので、その場合には結論も変わる可能性がある点に注意が必要です。

◎帰納法

これに対し、「帰納法」は、推論のフレームワークです。
「複数の事実」から「類似性を観察」し、「結論(推論)」を導き出すというものです。
たとえば、

・趣味やスポーツの会に参加している高齢者の介護費用は低い
・社会参加する人が多い地区では高血圧が少ない
・自身の特技を教える高齢者は幸福度が高い

 などの「複数の事実」の「類似性」として、“他者と関りを持っている高齢者の健康度は高い”という要素を導き出し、ゆえに“他者と関わる機会をつくることが高齢者の健康につながるのではないか”という結論を導き出すことができます。

これは、アンケート調査結果の分析などでも利用できるフレームワークです。
しかし、分析者の主観の影響を受けやすいという側面もあります。

 このような、代表的なフレームワークを今さら学ぶ必要があるのか? と思う方もいるでしょう。
しかし、私たちは案外ものごとをロジカルに考えていないものです。
思考に時間がかかる人、自分はよいと思っているのに相手にそれが伝わらない人、説明が下手な人、文章を書くのが苦手な人、これらの条件に心当たりがある人はロジカルシンキングを学ぶと良いかもしれません。

 なお、論理的かつ垂直に思考を掘り下げるロジカルシンキングに対し、水平的な思考(ラテラル・シンキング)も重要です。ビジネスにおいては、既成概念にとらわれない、直観的で斬新な思考も大切にしていく必要があります。

まとめ

研修の1日目は、ここまで紹介した内容(「計画の基本的な構造の理解」と「ロジカルシンキングのフレームワーク」)に加えて、「実際の行政計画の構造を分析するプログラム」と「アンケート調査結果を分析する上での基礎研修」を行いました。

また、2日目には、グループワークを中心とする各種トレーニングを通じて、最終的に計画の骨子を作成するところまで進めました。

研修に参加してくれた方は、行政計画策定業務の概略を理解していただけたものと思います。 

このように当社は、人を育てることに力を注いでいる企業です!
就職をお考えの学生の皆さんの参考になれば幸いです。 

 

この記事を書いた人

山村 靖彦

コラバド編集者。専門は社会福祉(社会福祉士)。 数多くの行政計画策定を支援してきた経験から、いろいろな提案をしていきたいと考えています。

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