東日本大震災の経験・教訓を振り返る

2021.03.10

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SRC

こんにちは、ライターの岩崎です。
東日本大震災10年。被災地では「節目」と称されることに抵抗があるとも聞きます。遠い昔の出来ごとではない、勝手に一区切りをつけないでほしい、復興は未だ厳しい現実..など様々な声があるようです。

そうしたことに思いを巡らせていたところ、2021年2月13日(土)23時8分頃、福島県沖を震源とする地震が発生し、福島県・宮城県では震度6強を記録しました。

気象庁の発表では、この地震も「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」の余震と考えられる、と報告されています。

自宅が仙台にある私は、あれ?揺れてるな(いつもの余震だな)という感覚から、間もなく尋常ではない揺れを感じ、すぐ立っていることが容易ではない状態に陥りました。
そして、やはり10年前の記憶が一瞬で蘇ってきました。揺れが収まった後でも、頭が攪拌されたような船酔い気分が続く、そんな地震でした。

サーベイリサーチセンターでは、震災の経験・教訓やその風化に関する調査を予定していましたが、この余震を踏まえた調査に急きょ仕立て直し、インターネット調査を実施しました。

東日本大震災10年 自主調査レポートをご覧ください

東日本大震災10年 自主調査レポート 東日本大震災の経験・教訓を振り返る

調査は、福島県500人、宮城県500人、計1,000人のインターネットモニターの回答によるものです。
併せて、現在15歳~25歳で、震災当時から岩手県・宮城県・福島県に居住していた若者への調査も行っています。
当時5歳~15歳相当の震災経験を持つ子どもたちに、現時点で、災害の教訓や伝承の大切さ、その風化などについてたずねたもので、前者の余震調査で親世代にあたる回答者と、対になるよう企図したものです。

1.地震発生!そのとき

先日の地震の最中(揺れている間)とっさに何をしましたか、との質問に対して、上位となったのは「テレビやラジオで地震情報を知ろうとした」43.3%、「その場で様子をみた」35.4%、「家族や周りの人に声をかけた」29.5%、「家具や壊れ物を押さえたりした」24.8%でした。
この結果から、東日本大震災以降も大きな余震を多く経験している地域においてさえ、家具の固定の重要性や、まずは自分の身を守るという行動が、未だ十分には浸透していないことがわかります。
かくいう私も、ちょうど飾り付けてあった娘たちのひな人形の転落防止に右往左往してしまい、身を守ることを実践できたかと言えば、お恥ずかしい限りです。

地震の最中にとっさにしたこと(M.A.)

2.備えは十分だったのか?

自宅で、災害への備えとして行っていたことでは、「食料・飲料などの備蓄」が47.2%と最も多く、以下「車のガソリンなどのこまめな給油」36.1%、「携帯ラジオ・懐中電灯などの用意」32.5%、「地震保険への加入」31.4%、「非常持ち出し品の用意」26.0%、「家具が倒れないようにする固定する」25.0%、「風呂にいつも水をいれておく」24.3%などが上位でした。
併せて、東日本大震災から10年を経て、備えや意識が薄らいでいたと感じたり、改めて備えに力を入れたいと感じたりした項目をたずねたところ、「非常持ち出し品の用意」、「マスク・消毒用品・体温計などを持ち出す用意」、「常用薬・処方薬を持ち出す用意」など、いざというときの持ち出し品の準備への気づきや、マスク・薬などの準備、そして避難に関する家族との連絡方法や避難場所、落ち合う場所などに関する相談や決めごとをあげる回答が目立ちました。

実施していた備え/備えや意識が薄らいでいた・備えに注力したいと感じたこと(M.A.)

3.震災の記憶や経験を話す機会

東日本大震災当時に妊娠中~中学生以下の子どもがいた親に該当する回答者に、東日本大震災について子どもに伝えたり、話し合ったりする機会についてたずねたところ、「たまに話すことがある」が61.1%と最も多く、次いで「ほとんど(あるいはまったく)話すことはない」が32.4%となりました。

震災の記憶(経験)を自分の子どもに伝えたり、話し合ったりすること
【親世代の回答者】

並行して行った「東日本大震災当時に5歳~15歳だった若者に対する調査」で、東日本大震災の記憶(経験)について、自ら話すことの頻度をたずねたところ、「たまに話すことがある」が43.7%、「覚えていることはあるが、ほとんど話さない」が42.3%と、親の層にあたる前述の調査結果よりも話す頻度が低いことがわかりました。

そして、震災当時の学齢層別にみると、学齢層が低いほど「たまに話すことがある」との回答比率が下がっており、「覚えていることはあるが、ほとんど話さない」や「覚えていることがほとんどない」との回答が多くなっています。
震災からの年数を経て、災害の危険、備えや行動の大切さを理解する記憶(経験)が少ない(ない)世代が、被災地にも増えつつあることがわかります。

震災の記憶(経験)を自ら話すこと(全体・当時の学齢層別)
【5歳~15歳だった若者に対する調査より】

どのような歴史的な出来事においても、時間の経過とともに経験の共有は薄れ、積極的な語り継ぎや、継続的な学習機会が無ければ、その教訓をしっかりと定着させることはできません。
調査結果では、大人の世代も、次世代である若年層も、共に経験や教訓の伝承が重要であると考えていることがわかりました。

人口減少・少子高齢化が災害によって加速化された被災地で、若者自身が、この巨大災害の教訓を伝え続けることの大切さを感じていることは大変重要ですし、調査結果から、明るい兆しを感じる機会にもなりました。

サーベイリサーチセンターも、こうした被災地の思いに応え、様々な活動のお役に立てる情報提供や事業の機会をもっと増やしていきたい、と考えています。

 

この記事を書いた人

岩崎 雅宏

社会を調査し続けたい!

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