在留外国人にとっての災害避難を考える

2022.02.16

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SRC

こんにちは、ライターの岩崎です。
1月15日13時頃(日本時間)、トンガの海底火山で発生した大規模噴火には大変驚きました。
その後、スマートフォンのプッシュ通知やテレビ各局が報じた「津波警報・注意報」に、その内容、意味がよくわからず驚かれた方も多かっただろうと思います。

日本語がよくわかる私たちでも状況の把握や情報への理解が追いつかないとき、日本で暮らす外国人の方々はどのように感じ、どう過ごされているのか気になるところです。

サーベイリサーチセンターでは、コロナ禍以前に急増していた訪日外国人旅行者に対して、地震や台風などが発生した際に空港やインフォメーションセンターなどでの聞き取り調査を実施して、情報認知の難しさや行動上の不安などに注目した調査結果をお知らせしてきました。
一方、在留資格を持ち日本で暮らしている外国人の方々に対しては、2020年(令和2年)3月~4月にかけて「在留外国人総合調査」という自主調査を実施しています。
この調査は、リンクオブアジア(105か国約15,000人のモニターパネル)を活用して1037人の有効回答を得たもので、日常生活の様々なテーマについて回答を頂いています。

今回は、この調査の中から、防災に関わる調査項目についてご紹介したいと思います。

災害に関する避難指示などの情報を知ることはできますか?

災害発生時に訪日外国人旅行者は、いわゆる「帰宅困難者」と同様の状況に陥ります。
さらに、日本語が理解しにくい(できない)状態で、身の回りの諸情報が入手できず、災害からの避難、旅程の変更、帰国などの行動を判断しなければならないという問題がクローズアップされました。

在留外国人については、日本に来たばかりの人もいれば、在留期間が数年にわたる人もいるため、生活環境や習慣、文化、言語などへの理解の程度はかなり幅があるといえます。
いずれにしても、私たちと同じ地域で日常生活を過ごす人々です。

“災害発生やその兆しに際して、避難指示などの情報を知ることができますか?”という質問に対して、5割近くの在留外国人は「日本語ができるので、テレビやラジオ、役所の広報車で問題なく知ることができる」と回答しています。
しかしながら、この結果は、日本語の避難情報では困る人が約半数いるともとらえられます。
さらに、「友人・知人からの連絡」や「学校や職場」から情報を得るケース、「日本語ができる家族がいる」ケースが、それぞれ4人から3人に1人程度はあてはまるようです。
したがって、緊急時に「自身の力」で情報を認知したり、判断・行動したりする上では、十分な情報源・確認手段を持たない人が少なくないと考えられます。

(在留外国人調査)避難指示などの認知手段

災害のために備えていることはありますか?

災害への備えについては、「食料や飲料水を準備している」と回答した人が44.6%と最も多くなっていますが、以下「避難する場所を決めている」(35.2%)を除くと、ひとつひとつの備えができている人は4人に1人以下でした。
地域の災害リスクを知るためのハザードマップをはじめ、防災の備えなどの知識を得るためには、今ある市民向けの啓発情報の多言語化やその紹介を引き続き拡充していく必要があります。

(在留外国人調査)災害のために備えていること

災害の発生時に不安になることは?

災害に対する不安をたずねたところ、「住宅が被害にあった場合に住むところ」、「避難所での生活」、「災害の経験がなくどのような状況になるのかわからない」、「災害でけがをした場合の対応」が上位項目となっています。
災害による被害が深刻であるほど、住まいや医療などへの不安が高まるのは当然ですが、外国人は言葉の問題や地縁の薄さなどから、より弱い立場に陥ることへの不安が高く示されています。

(在留外国人調査)災害の発生時に不安になること

同じ地域の住民同士が支え合う輪の中に

過去の多くの災害から、その被災地では自助・共助・公助それぞれの重要性が浮き彫りとなり、一番の核となるのは個々の備えと、地域コミュニティという住民相互の支え合いの形を機能させることとされます。
前段に示したとおり、災害への日頃の備えや居住地域の災害リスク、いざというときの災害情報、避難指示等の重要な情報の伝達手段などを浸透させるためには、自治体やマスメディア等による周知・啓発の事業等が欠かせません。
教育・啓発的な日常の提供情報、災害時の緊急情報、それぞれの多言語化とその周知を継続的に行っていく必要があります。

一方、地域コミュニティにおいては、例えば家庭ごみの出し方をはじめ、暮らしのマナーなどを覚えてもらうことと同じように、災害が多いこの日本では、防災知識や災害時の対応などについて、身近にいる在留外国人の方を含めて、共に学ぶ、活動する機会を増やす工夫が必要です。
いざというとき、避難所の立上げや運営は、住民同士の支え合いが前提です。
避難所での必要な情報伝達、ルールの周知など、多言語対応の参考となる情報は、内閣府自治体国際化協会(CLAIR)などのホームページに、すぐ活用できるツールやヒントが掲載されています。
それらの活用と共に、日頃から在留外国人の方々と、集会や訓練などを通じたコミュニケーションによって、避難所の重要な運営主体になってもらえるならば理想的ですね。

 

 

この記事を書いた人

岩崎 雅宏

社会を調査し続けたい!

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