教育と福祉の連携 教育福祉を知ろう!

2024.06.21

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福祉のおはなし

こんにちは、ライターの池田です。
コラバドでは、これまで福祉に関する様々なトピックを発信してきました。
今回の記事では、福祉とは距離が遠いように思える教育と福祉分野の連携に関する「教育福祉」についてご紹介します。

聞き慣れない言葉かもしれませんが、不登校や貧困、発達障がいなどの困難さを抱える現代の子どもたちの成長において非常に重要な概念となっています。
教育福祉とはどのような福祉のことなのか、その概念や具体例とともに解説します。

教育福祉とは?

教育福祉とはそもそもどんな概念なのでしょうか。

教育福祉の概念は、教育学者である小川利夫によって1972年に提起されました。ここでは書籍からの定義を引用して解説します。

”教育福祉とは、教育と福祉が連携して、子ども・若者あるいは成人が安定した生活基盤のもとで豊かな人間発達を実現することをめざす概念である。”(辻 2017:1)

言い換えると、子どもと若者を取り巻く貧困や障がいなど様々な困難に対して、福祉と連携して支援することで成長や発達を支えるという考えになります。
学校における児童生徒の環境調整や関係機関と連携した支援を行うスクールソーシャルワークは、まさに教育福祉の代表的な取組と言えます。

教育福祉は、高度経済成長期に経済的な格差が広がる背景において生活基盤が不安定な層が増えたことや、夜間中学・養護施設の児童や勤労青年などの「教育と福祉の谷間」の問題に焦点が当てられたことで提起されました。
この「教育と福祉の谷間」の問題は、子どもの貧困やヤングケアラー、不登校の児童生徒の増加など今日においても広い範囲にわたっており、支援の重要性は増してきている状況にあります。
ちなみによく似た言葉として、「福祉教育」がありますが、福祉教育は身の回りの福祉に関する課題や解決策を学ぶ教育になりますので、教育福祉とは全く異なるものになります。

教育福祉の例

教育福祉には具体的にどのような取組があるのでしょうか。教育福祉は類型化すると、主に学校教育福祉地域教育福祉の2つに分けられます。

学校教育福祉はスクールソーシャルワークとも呼ばれていますが、主に学校教職員やスクールソーシャルワーカーなどが子どもや家庭に関わる取組が該当します。
最近では、「地域に開かれた学校づくり」の取組においてコミュニティ・スクール[1]と地域学校協働活動[2]が一体的に推進されており、地域との連携により学習支援などの活動も行われるようになってきています。

地域教育福祉は、学校に限らない公民館などの社会教育施設などで行われる取組が該当します。
歴史的には、夜間中学や青年学級などの成人向けの取組が行われてきましたが、現在では、地域社会の希薄化や貧困などにより、子ども食堂などの子ども向けの取組も行われるようになりました。
また、最近では、子どものサードプレイスとして「宿題カフェ」と呼ばれる放課後に子どもが集う場所づくりも行われています。
地域教育福祉の取組には、地域に根差した活動や社会教育の実践が大きく関わっています。
これらは必ずしも自治体によって行われているものだけでなく、NPOなどの民間団体によって取り組まれている活動もあります。

教育福祉の視点

教育福祉は、不登校、障がい児、外国人の子ども、子どもの貧困など多岐にわたる分野で重要な取組となっています。
取組を行っていくためには、学校教職員と福祉関係者との連携や地域との連携が大切になります。
様々な職種や立場の人たちが連携して、子どもたちにとってどのような支援が必要なのかを考えることが重要です。

また教育福祉が重要視されるようになった背景には、制度の狭間に陥ってしまった当事者たちの問題がクローズアップされたことがあるため、既存の制度や支援では対応できない問題に注目することも重要です。
特にヤングケアラーはその典型であり、これまで見過ごされてきた問題に焦点が当てられ、子どもの権利の視点から支援のあり方が考えられています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。教育福祉という言葉自体は馴染みが薄くても、その取組は意外とみなさんの身近にあるということがお分かり頂けたかと思います。
教育福祉では、子どもや若者たちの育ちや学びにどのような支援が必要かを考えることが重要です。
これからも子どもの最善の利益の視点に立って、教育福祉が一層推進される社会になることを願います。

参考文献
辻 浩, 2017, 『現代教育福祉論—子ども・若者の自立支援と地域づくり』ミネルヴァ書房
山本理絵・望月彰、愛知県立大学「教育福祉学研究会」編, 2023, 『教育と福祉が出会う支援—子ども・教師・専門職がつながる学校・地域をめざして』溪水社


[1] 学校運営協議会を設置している学校のこと。学校運営協議会に地域住民などが参画することで、学校の運営に地域の意見を生かしながら地域と一体となって特色ある学校づくりを進めていくための制度。

[2] 地域の幅広い住民や団体などの参画により、地域全体で子どもたちの学びや成長を支えるとともに、「学校を核とした地域づくり」を目指して、地域と学校が相互にパートナーとして連携・協働して行う様々な活動のこと。

この記事を書いた人

池田 翔太郎

静岡県出身。

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