地方自治法改正後の「総合計画」の策定に必要な4つの視点

2016.12.16

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政策のおはなし

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こんにちは、ライターの山村です。
今、地方自治体の「総合計画」は転換期を迎えています。

地方自治法の改正により、「基本構想」を含む総合計画の策定は義務ではなくなりました。つまり、“作る・作らない”を含め、これからの「総合計画」に関する事項は自治体が独自に判断できるしくみになっています。

でも、自治体職員さんの立場からすると、“何をどう判断”したらいいのか? これからはどんな総合計画にしたらいいのか? そもそも“作らない”という選択はアリなのか?・・

悩みは多いですよね。

個人的には、「総合計画」を作らないという判断は無いものと考えていますので、今回はこれからの総合計画を考える上で大切だと思う4つの視点をご紹介いたします。

まずは、「総合計画って何?」

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自治体職員の皆さんには説明不要ですが、初めての方のために、従来の「総合計画」の形を確認しておきます。

「総合計画」は、図のように「基本構想」「基本計画」「実施計画」という3層からなる構造を持ち、自治体の最上位計画に位置付けられています。
まちの将来像が記載され、自治体の全ての施策が網羅されるよう作られています。

まさに、行政運営の中核をなす計画ですね。

「基本構想」は10年、「基本計画」は5年(前期5年・後期5年で改定するのが一般的)、「実施計画」は毎年見直されるというのが一般的です。

「地方自治法の改正」というパラダイムシフト

「総合計画」の核となる部分が「基本構想」です。元々、「総合計画」の法的根拠は、地方自治法における「基本構想」の策定義務規定にありました。

しかし、2011年5月の地方自治法改正により、「基本構想」の策定は義務ではなくなりました。

この時期に、日本生産性本部が自治体を対象に行ったアンケート調査では、総合計画を「今後も作り続ける」と答えた自治体は58%、「未定」と答えた自治体は41%を占めました。およそ4割の自治体は、これからの総合計画の策定に何らかの悩みや疑問を抱いたものと考えられます。

これからの「総合計画」に必要なこと!

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私は、自治体の総合計画策定の企画書において、“総合計画を形骸化させない!”という提案をしています。

自治体職員の方から、従来の「総合計画」は、策定する時には手間がかかり、冊子になったら“使わなく”なるという課題があるというお話をお聞きすることがあります。
実際、予算や補助金を確保する際の根拠資料として使う程度という声が聞かれるほど、日常的に“使われる”総合計画にはなっていない自治体が多いものと思われます。
この状態を改善しようという提案が“総合計画を形骸化させない!”、言い換えれば“使われ続ける総合計画をつくる”という考え方です。

これからの総合計画策定に必要な4つの視点

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“総合計画を形骸化させない”ためには、どのような視点が必要なのでしょうか。

いつも、企画書等に記載している内容から、総合計画策定に必要な視点として次の4つを提案します。

①全部署、全職員の行動の指針となる「総合計画」

「総合計画」が、自治体の全ての部署、全ての職員さんの行動に結びつく必要があります。

しかし、「総合計画」には、“何をやる(事業)”のかが全て書かれている必要はありません。“何を実現するのか(目的)”、そして、その実現を“どう確認するのか(評価)”が書かれていれば十分です。大切なことは“何を実現するのか”という「目的」と、そのために職員1人ひとりが何を行うのか、その両者を合理的に結び付けることができる機能を「総合計画」が持つということです。

②財政運営の指針となる「総合計画」

「総合計画」を根拠とする財政運営のしくみを実現する必要があります。

これは、従来のような“「総合計画」に記載されている事業だから予算化する”という形式的なことではありません。“何を実現する”ために必要な事業予算なのか、常に「総合計画」を根拠として判断することができるようにしようという考え方です。

③人事運営の指針となる「総合計画」

「総合計画」を根拠に、組織の人数や人材の配置等の人事運営を行うことができるようにする必要があります。

「総合計画」が人事運営と連動することにより、“行財政運営の健全化”という視点だけではなく、より戦略的な人事運営を考える視点が生まれます。新規採用職員数の調整や専門職員の確保等の課題も、“何を実現する”ために必要なのかという判断が可能となります。さらに、総合計画を根拠とする人事評価のしくみが実現できれば、やりがいに満ちたいきいきとした組織を実現できるはずです。

④PDCAの核となる「総合計画」

「総合計画」が、自治体における最上位のPDCAの核となる必要があります。

今日、様々な法律に基づく個別分野の諸計画が策定されており、それぞれに目標指標が設定されています。これら個々の評価と「総合計画」における評価との整合性や位置づけを整理しなければなりません。①にも記載したとおり、あくまでも、“何を実現するのか(目的)”、そして、その実現を“どう確認するのか(評価)”を明確にすることが大切です。

まとめ

今回ご紹介した4つの視点は、実際に私が自治体の総合計画策定時の企画提案としてまとめたものの一部です。

これらの視点をクリアする新しい総合計画のデザインは、自治体の現状を踏まえて構築する必要がありますが、その核となるのは“組織のマネジメント”だと考えています。
「総合計画」を自治体のマネジメント・ツールにできるかが鍵となります。

長くなりましたので、このお話はまた別の機会にご紹介できればと思います。

 

<参考文献>
玉村雅敏ほか,2014,『総合計画の新潮流―自治体を支えるトータル・システムの構築―』公人の友社

この記事を書いた人

山村 靖彦名古屋事務所

コラバド副編集長。専門は社会福祉。 福祉関係を中心に、様々な行政計画策定を支援。 実は、総合計画の策定業務では辛い思い出も多いが、今はどれもいい思い出。 社会福祉士、専門社会調査士。