地域の国際化に対応するには? 多文化共生を考えよう!

2018.09.13

19

政策のおはなし

こんにちは、ライターの池田です。
名古屋事務所で主に都市交通分野の業務を担当しています。

突然ですが皆さんは多文化共生というフレーズをご存知でしょうか。

単語の組み合わせからなんとなく意味は掴めるかと思いますが、異なる文化的背景を持つ人々が共に生きていくという意味です。

この多文化共生は、20世紀後半からのグローバル化による人の国際移動や日本国内の外国人住民の増加により、近年非常に重要かつホットな話題となっています。

普段はあまり意識しないかもしれませんが、近所に外国の方が多く住んでいる地域の人にとっては身近なテーマではないでしょうか。

今回は多文化共生の推進の背景やその考えをご紹介します。

多文化共生推進の背景

そもそもなぜ多文化共生の推進が必要なのでしょうか?
背景には在留外国人数の増加があります。

(法務省白書 平成29年版「出入国管理」第1部より抜粋)

1990年代から在留外国人数は急激に増加し始め、近年では200万人を超えています。
増加の背景にはインドシナ難民の流入や政府による留学生受け入れの促進があります。
さらに、1990年には出入国管理及び難民認定法が改正され(※1)、ブラジル人を多く含む日系南米人が大量に来日するようになりました。

このように1990年代に増加した「ニューカマー」と呼ばれる人たちが日本各地に定住化することにより、地方自治体は外国人住民に関わる課題について取り組むようになりました。

では、定住する外国人が増加していった結果、どのような課題が浮かび上がるのでしょうか。

定住外国人が直面する課題は、大きく分けてコミュニケーションと生活に関わる課題があります。

コミュニケーション面では、言葉が通じず住民とのコミュニケーションが上手く図れない、また行政が提供する情報が利用できないといった課題があります。
住民とのコミュニケーションが希薄であると地域で孤立し、緊急のときに支援が受けられないという場合が考えられます。

生活面では、外国人との生活習慣の差異による騒音・ごみ出しのトラブルや、外国人の子どもの日本語習得に伴う課題があります。
いずれについても、日常生活とは切り離せない問題のため、適切な支援策が求められます。

<解説>
※1 在留資格の再編により、「定住者」の在留資格が日系3世に対して与えられた。

外国人との共生とは?

こうした課題や状況を踏まえ、総務省は2005年に多文化共生の推進に関する研究会を設置し、多文化共生推進の必要性やその意義を示しました。

研究会の報告書では、地域における多文化共生を以下のように定義しています。

国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的ちがいを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくこと

(総務省 多文化共生の推進に関する研究会報告書より引用)

この定義から、外国人は、時には支援する対象ではありますが、地域社会では対等な住民として共に生きていくことが重要だとわかります。

多文化共生の推進には、外国人を一時的滞在者としてみなすだけでなく、生活者や地域住民として認識する視点が求められます。
さらに研究会は、多文化共生施策を推進する意義を、住民の異文化理解力の向上とユニバーサルデザインの視点からのまちづくりと唱えています。

また、本記事では触れませんが、総務省は地方自治体の多文化共生指針と計画策定の参考のために「地域における多文化共生推進プラン」を策定しています。

多文化共生の推進=外国人支援?

ここまでの記事を読むと「多文化共生とは、日本に住んでいる外国人の生活支援なのか?」と思う方がいるかもしれません。

しかし両者は必ずしもイコールの関係ではありません。

多文化共生推進施策には、行政情報の多言語対応や子どもの日本語学習支援などがあり、外国人の生活を支援することだけが目的ではないからです。

先述の定義にもあるように、多文化共生は日本人も外国人も対等な関係でありつつ、地域社会で共に生きていくことを謳っています。

多文化共生においては、どちらかが一方を助けるということではなく、両者それぞれが地域の一員であり、地域社会に参画することが重要ということです。

まとめ

多文化共生についての課題には、先に述べた以外の課題も数多くあります。

各自治体では多文化共生を推進するための施策を実施しており、NPOやボランティア団体と連携して地域ぐるみで活動を行うこともあります。

これは私の体験談ですが、名古屋市内での日本語教室でのボランティア教師の経験があり、そこで様々な国籍の方と知り合いました。
そして、日本語の学習を通じて、教室が私たち日本人と外国人住民との良い交流の場になっていると感じました。

日本語教室のような、外国人との交流の場に参加することは、彼らをより知ることや相互理解につながります。
そういった場を創出し、交流を促進することも多文化共生の重要な要素の一つです。

多文化共生の推進と聞くと日々の生活からは遠く感じるかもしれませんが、実際は私たちの身近な場所で展開されています。

みなさんも身近にある多文化共生の活動を調べて、地域の外国人との共生について考えてみてはいかがでしょうか。

<参考資料>
安藤幸一他, 2010, 『多文化共生キーワード辞典 改訂版』明石書店
法務省入国管理局, 2017, 『平成29年版 出入国管理 日本語版』法務省
多文化共生の推進に関わる研究会, 2006, 『多文化共生の推進に関わる研究会 報告書』総務省

 

この記事を書いた人

池田翔太郎名古屋事務所 調査課

主に交通関係の業務を担当。ときどきボランティア日本語教師。

スポンサードリンク