これからの「総合計画」を考える 〜形骸化しない総合計画とは?~

2018.11.15

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政策のおはなし

こんにちは。ライターの山村です。
以前、「総合計画」に関する記事を書いてからおよそ2年が経過しました。 

実は、「総合計画」あるいは「地方自治法改正」というキーワードに関心を持ってくださる方がたくさんいらっしゃいますので、以前から関連コンテンツを書きたいと思っておりました。 

前回の記事(地方自治法改正後の「総合計画」の策定に必要な4つの視点)では、地方自治法改正により義務ではなくなった総合計画について、今後どうしていくべきなのかを考察しました。
結論としては、“今後も策定をおススメする”こと、そして、“形骸化しない総合計画をつくること”の2点を提案しました。
“形骸化しない総合計画”をつくるためのポイントとして、前回の記事では以下の4点に触れました。

①全部署、全職員の行動の指針となる「総合計画」
②財政運営の指針となる「総合計画」
③人事運営の指針となる「総合計画」
④PDCAの核となる「総合計画」

今回は、上記の4視点のうち、④PDCAの核となる「総合計画」について、少し掘り下げてみたいと思います。

「計画」の意味から考える、「総合計画」の役割

まず、「計画」とは、本来どのようなものなのでしょうか。
ブリタニカ国際大百科事典では、次のように説明されています。

将来実現しようとする目標と,この目標に到達するための主要な手段または段階とを組合せたもの。目標の達成時点や目標の内容が明確にされていること,また目標を最も能率的に達成する手段が選ばれていることが計画の重要な特性をなす。(以下省略)
(引用元)

つまり、「計画」には、将来実現しようとする「目標(目的)」と、その「達成手段」が明記されている必要があるということです。

自治体の総合計画では、「目標(目的)」とは“将来像や基本目標”、「達成手段」とは“施策や事業”にあたると考えられます。
それらを明確化することが総合計画の役割です。

「計画」に始まり、「計画」に回帰するPDCAサイクルが必要!

先述のとおり、総合計画の役割は「目的」と「手段」とを明確化することです。これは、PDCAサイクルの「P(Plan)」に該当します。

次に、「手段」を「実行」に移します。
つまり、計画に位置付けた事業等を遂行するということです。これが「D(Do)」に該当します。

次に、実行した結果を評価します。
評価とは、計画に位置付けた「目的」と、手段を実行に移した「結果」が一致しているかどうかを確認するプロセスです。これが「C(Check)」に該当します。

そして、評価結果を計画に反映させます。
評価の結果を踏まえて、次の「手段」を改善するということです。
また、場合によっては、より高い目標を掲げるなど「目的」を変更することもありえます。これが「A(Action)」に該当します。

これらは、PDCAによるマネジメントの基本的な流れです。
ここで重要なのは、「評価」の結果は必ず「計画」にフィードバックされるということです。単なる「手段」の見直しの場合でも、「目標」の上方修正の場合でも、「評価」の結果は必ず「計画」に回帰する、これが“形骸化しない総合計画”に必要な条件です。

「評価」するのは、次の「手段」を変えるため!

次に、「評価」(Check)プロセスを詳しく考えてみましょう。
一般的に、“評価する”という作業は、事前に決めておいた「目標指標」の達成・未達成という基準で行われることが多いと思います。

未達成の場合には、“もっと頑張らなければ!”となり、次の「手段」の改善が検討されるものと思いますが、目標指標を達成した場合はどうでしょう?

下図のイメージのとおり、目標を達成した場合も、より高い「目標」の設定とそれに応じた「手段」の再設定という流れになると思います。

つまり、達成の場合も、未達成の場合も、同じ「手段」を毎年繰り返すというマネジメントはあり得ないということなのです。
したがって、「評価」(Check)するのは次の「手段」を変えるため!ということができると思います。

PDCAの起点となり、形骸化しない総合計画とは?

こうして見ると、“形骸化しない総合計画”をつくるということは、総合計画を起点とし、総合計画に回帰するPDCAマネジメントを実現するということに他なりません。

10年間の基本構想と、5年間の基本計画からなる従来型の総合計画は、次の「手段」を変えるためのマネジメントツールには不向きです。
次の「手段」を変えるということは、計画を変更することを意味するからです。

そこで弊社は、“形骸化しない総合計画”の具体的な形として、役所内の組織(課、室、係、グループなど)ごとに自らの行動を立案して短期的なPDCAを行う「組織行動計画」を作成する手法を提案しています。
この手法により、以前の記事に記載した4つのポイントの①全部署、全職員の行動の指針となる「総合計画」、②財政運営の指針となる「総合計画」、③人事運営の指針となる「総合計画」などを実現することが可能だと考えています。

「組織行動計画」を含む今後の「総合計画」については、次回の記事でご紹介したいと思います。

 

この記事を書いた人

山村 靖彦名古屋事務所

コラバド編集者。社会福祉士。数多くの行政計画策定を支援してきた経験から、いろいろな提案をしていきたいと考えています。

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