参議院選挙をデータで振り返る~闘いの構図を可視化してみた〜

2022.07.20

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政策のおはなし

ライターの木村です。
2022年7月10日投開票の第26回参議院選挙は、報道各社による大方の事前見通しの通り、自民党単独で改選過半数越えとなりました。
野党共闘は非常に限定的で(読売新聞オンライン、2022年7月11日)、野党が争点化を狙った「物価高」も十分な議論に至らなかった(朝日新聞、2022年7月11日)等の評価があります。
今回の選挙では、主要政党といわれる政党だけで9党あり、特に無党派層にとっては、各党、各候補者の政策の違いを把握することが大変でした。
自分の考えに近い政党を探すために政党マッチング・アプリを利用した人も多かったことと思います。

選挙戦を終え、今回の選挙がどのような構図の戦いだったのか、データで可視化して振り返ってみたいと思います。
ここでは各党の政策のみに注目しますが、個別の政策内容には踏み込まず、よりシンプルに政策的方向性だけに注目します。
大きな方向性のみに注目することで、例えば、野党共闘は政策的方向性からみてほんとうに実現不可能だったのか、与党寄りと言われた野党政党はほんとうに与党寄りだったのか、また、第三極は存在したのか、あるいは、与党2党は政策的には同じ方向を向いていたのか等の構図が見えてくると思われます。

今回の分析にはクラスター分析(※1)という方法を使用しました。
また、データには朝日新聞社と東京大学谷口将紀研究室の共同調査の結果を使用しました。
この調査は、各党の候補者を対象に選挙前に行われたもので、憲法、外交・安全保障、経済・財政、新型コロナ対応、多様性、原発の各政策領域に関し、21項目にわたって賛成・反対等で方向性がとらえられています。
候補者の回答(合計512人が回答)を政党別に平均したデータが公表されています。分析には、この政党別の回答の平均データを使用しました。

分析結果は・・

分析結果は図の通りです。
トーナメント表のような図です。
この図では、横線が短いほど類似性が高く、逆に、横線が長いほど異質であることを示しています。
これによると、立憲民主党、共産党、社民党は政策的方向性が非常に似通っていることがわかります。これは同じような政策的方向性が三つの選択肢として示されているような状態です。
同様に、自民党と公明党が似通っており、日本維新の会・NHK党・国民民主党の3党が似通っていることがわかります。
また、れいわ新選組は、立憲民主党、共産党、社民党の3党と類似性があり、与党の自民党・公明党と、野党のうち日本維新の会・NHK党・国民民主党の類似性が高いこともわかります。
他方で、立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組の4党と、自民党・公明党及び日本維新の会・NHK党・国民民主党との間には大きな方向性の違いがあることも分かります。
このことから、今回の選挙戦では[与党]VS[野党]という明瞭な構図ではなく、大きく分ければ[与党+与党寄りの野党]VS[与党と距離のある野党]という、野党分裂の構図であったことが見えました。

また、この図からみる限り、明確な第三極は見当たりません。
強いて言えば、れいわ新選組がややそれに近いでしょうか。
第三極を標榜する日本維新の会は、国民民主党、NHK党とともに与党寄りとなっています。
国民民主党は、立憲民主党とは完全に別の勢力を形成しています。
個人的には、日頃ぼんやりとイメージしていた構図が、データで再確認されたという感じでした。

なお、この分析は限られたデータで行っています。
分析データや分析方法を変えると別の構図が見えてくるかもしれません。
例えば、政党レベルではなく候補者レベルで分析したり、別の政策軸を含めたり、あるいは政策以外も視野に含めたりすると別の構図が見えてくるかもしれません。
あくまでも一つの分析事例として参考にして頂けると幸いです。

※クラスター分析:「クラスター」とはグループ、集団、層の意。類似性に基づいてグループ化する方法の総称であり、いくつかの方法がある。この分析ではWARD法(最小分散法)を用いた。データを標準化して分析を行った。

<参考資料・データ>
朝日新聞デジタル(2022年6月24日)「(朝日・東大谷口研究室共同調査)参院選候補者、読み解くと」
朝日新聞(2022年7月11日)「野党分散 立憲沈む」
読売新聞オンライン(2022年7月11日)「1人区は「一騎打ち」も自民…11選挙区中「9」、岩手では30年ぶり議席」

 

この記事を書いた人

木村 浩巳

法政大学地域研究センター客員研究員を経てSRC勤務。専門社会調査士。 2009 年度より環境研究総合推進費E-0906(2)「日本の自治体における低炭素社会構築及び地球環境問題への取り組み促進施策に関する研究」,2010 年度より環境研究総合推進費S-8(2)「自治体レベルでの影響評価と総合的適応政策に関する研究」,2015 年度より文部科学省SI-CAT「気候変動技術社会実装プログラム」に参加。著書に『気候変動に適応する社会』(共著,技報堂出版)、『地域からはじまる低炭素・エネルギー政策の実践』(共著,ぎょうせい)など。

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