行政がつくる計画書を知っていますか?(後編)

2016.09.25

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行政のおはなし

計画書2

こんにちは。ライターの一杉です。
前回に引き続き、自治体が策定する計画書のお話です。

なぜ計画が必要なのか

行政はなぜ計画を策定しているのでしょう。地方自治法の一部を改正する法律(平成23年法律第35号)が平成23年8月1日に施行されるまで、市町村は、総合的かつ計画的な行政の運営を図るための方向性を示すものとして基本構想を策定することが義務づけられていました。この基本構想は多くの市町村で「総合計画」と呼ばれ、市町村の最上位の計画として策定されてきました。義務計画ではなくなりましたが、今でもほとんどの市町村が策定しています。なぜなら、「総合計画」は行政運営の根幹をなす最も重要な方針が書かれているからです。民間企業でもスローガンを立てたり、目標値を定めたり、中期経営計画を立案したりしますよね。行政も民間企業と同じような取り組みをしているわけです。

市町村の計画はピラミッド型

ここでは「総合計画」の詳細な説明はしませんが、市町村が行うすべての分野(都市計画、産業振興、健康福祉、教育・生涯学習、行財政など)を網羅した計画として、将来こういうまちになりたい、こういうまちを目指そうと、最も力を入れて策定されてきた計画です。しかし、市町村が扱う範囲はとても幅広いものです。産業振興分野1つとっても、商業、工業、農業、林業、水産業、観光業などがあります。 スライド1

そのため、「総合計画」には、まちの全体を網羅したまちづくりの基本的な方向性(基本構想)と、いくつかの主な取り組みや事業(基本計画)が掲載されています。これより細かな部分は、「商業振興計画」、「農業振興地域整備計画」など、個別の計画で補完されています。したがって、行政は多くの計画を策定する必要があるわけです。

行政の計画は「総合計画」を頂点にして分野別計画がぶら下がるピラミッド型が基本形です。それぞれの計画では、あれをやろう、これをやろうと、様々な事業(実施計画)が立案されています。この事業を実行していくためには予算が必要であり、行政は毎年度予算を組むわけです。計画に基づき、予算のついた事業が執行されていきます。 スライド2

行政に計画がなかったら

仮に計画がなかったとしたらどうでしょう。そのときの思いつきや、職員個別の考え方でモノゴトを進めてしまうと、職員によって相反する取り組みを行ってしまったり、部署によって住民への対応が異なってしまったりと、行政運営がうまくいかないことでしょう。ですから、職員の取り組み指針となるような計画が必要なんですね。また、計画があると、誰がいつまでに、何を、どうするかがはっきりしますし、それを行った結果どうだったのか検証も容易になります。

計画書は皆さんのもの

昔は、計画書に記載されていないと国から補助金をもらえない時代もありました。今はそんなことはありません。むしろ、計画書は住民に対してこういうまちづくりをするよと宣言するものであり、住民の参画を促すものになりつつあります。目標値や指標を掲載する計画も増えてきました。皆さんも色々な計画書に目を通してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

一杉 浩史経営企画部・静岡事務所

専門はまちづくり。自治基本条例や総合計画などの策定を支援している。 何足のわらじを履いているか自分でもわからない(笑)。 平成27年度東京大学社会科学研究所講師。

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