自治体の「地域福祉計画」を知ろう! 〜『蟹江町地域福祉計画・地域福祉活動計画』のご紹介〜
こんにちは、ライターの山村です。
自治体の「地域福祉計画」を知ろう!と題した今回の記事では、当社が策定を支援した愛知県蟹江町の「地域福祉計画・地域福祉活動計画」をご紹介したいと思います。
愛知県蟹江町の計画はこちらからご覧いただけます。
蟹江町地域福祉計画・地域福祉活動計画とは?
今回ご紹介する「蟹江町地域福祉計画・地域福祉活動計画」(以下、「蟹江町の計画」とします)は、これまで別々に作られてきた「地域福祉計画」と「地域福祉活動計画」を“1つの計画”として策定したものです。
従来、「地域福祉計画」は町が、「地域福祉活動計画」は社会福祉協議会(※)が作ってきましたが、両者のめざすところは同じですので、1つの計画にまとめたのが今回の計画です。
近年では、他の自治体においても、一体的に作る事例が増えてきています。
(※社会福祉協議会は、民間の社会福祉活動を推進することを目的とした民間組織です。)
蟹江町の計画がめざすことは?
蟹江町の計画がめざすことは、だれもが安心して生活できる地域をつくることです。
安心して生活できる地域とは、
・だれも孤立させない地域
・だれも排除しない地域
・互いに支えあって問題を解決できる地域
などを意味します。
このような地域を、みんなで協力して作っていくことをめざしているのが、蟹江町の計画です。
「自助・共助・公助」の考え方を知ろう!
地域福祉では、自分でできることは自分でするというのが基本的な考え方です。
これを「自助」といいます。
もちろん、自分の力だけではすべての問題を解決できませんので、近隣の住民や地域の人々が協力して問題解決に取り組むことも必要です。
これを「共助」といいます。
自助でも共助でも解決できない課題は、公的な福祉サービス等で支援します。
これを「公助」といいます。
「自助」「共助」「公助」がバランスよく働いて、地域の様々な課題を解決していくのが地域福祉のめざすところです。
その上で大切なことは、地域で生活する住民1人ひとりの意識や理解です。
まずは、地域の皆様が地域福祉の考え方を知り、協力関係を強めていくことが大切です。
計画の全体像を知ろう!
では、実際に蟹江町の計画に書かれている内容を見てみましょう。(計画書はこちらからご覧いただけます。)
計画書の「Ⅱ 計画の基本的な考え方」(P7)には、計画の体系や基本理念などが書かれています。
計画の体系とは、“計画の骨組み”です。
これを見れば計画の全体像を知ることができます。
蟹江町の計画では、「つながりあい 幸せを実感できるまち かにえ」という基本理念を実現するため、4つの基本目標を設定しています。
以下、1つずつ見ていきましょう。
「1 地域福祉を進める意識を高める」
1つめの基本目標は“意識づくり”に関することです。
多世代交流の推進や福祉教育の充実などにより、住民1人ひとりの意識を高めることが盛り込まれています。
「2 地域福祉を進めるしくみをつくる」
2つめの基本目標は“しくみづくり”に関することです。
“地域”を、町全体という広い範囲で捉えるだけでなく、中学校区、小学校区、町内会というように細分化し、それぞれの場面に応じたしくみをつくろうというのが蟹江町の地域福祉の考え方です。(計画書のP11に詳しく書かれています)
「3 地域福祉の担い手を育てる」
3つめの基本目標は“担い手づくり”に関することです。
地域の課題やその解決策を話し合う場やボランティア活動等に定期的に参加する人を育てることが盛り込まれています。
「4 安心して生活できる地域の環境をつくる」
4つめの基本目標は“安心して生活できる地域の環境づくり”に関することです。
高齢者や障害者などの権利擁護、生活困窮者対策、防犯・防災対策の充実などが盛り込まれています。
このように、蟹江町の計画は、地域福祉に対する町民の意識を高め、地域福祉を進めるしくみをつくり、担い手を育て、安心して生活できる地域環境をつくることにより、「つながりあい 幸せを実感できるまち」を実現しようとしている計画であることがわかります。
蟹江町の計画の特徴は?
最後に、蟹江町の計画の主な特徴を2つご紹介いたします。
1つは、町民との意見交換を大切にしていこうとしている点です(P13参照)。
蟹江町の計画では、4つの基本目標ごとに“重点的な取り組み”が設定されています(P7参照)。
基本目標の3「地域福祉の担い手を育てる」の重点は、「①意見交換の機会づくり」です。
実は、この計画を策定する際には、地域住民の参画による「地域福祉懇談会(町民ワークショップ)」を実施しました(P54参照)。
ワークショップでは、まず理想とする地域の将来像を具現化し、その実現のために何ができるかを参加者に考えていただきました。
蟹江町の計画では、このワークショップのような場(意見交換)を今後も定期的に開催していくことを位置づけています。
もう1つの特徴は、地域福祉を進める体制(しくみ)を明確化していることです。
蟹江町の計画には、“地域”を4段階で捉える考え方を記載しています。
下図のとおり、町全体を「第1層」、中学校区を「第2層」、小学校区を「第3層」、町内会を「第4層」と位置付けています。
このうち、第1層と第2層は、介護保険制度により設置されている「協議体」を中心に、生活支援コーディネーターが取り組みを進めるしくみとしています。
より小さい単位である第3層と第4層は、コミュニティソーシャルワーカーが中心となり、先に触れた「意見交換」を通じて取り組みを進めるとしています。
まとめ
今回は、“自治体の「地域福祉計画」を知ろう!”というテーマで、弊社が支援した愛知県蟹江町の事例を紹介しました。
蟹江町の計画は、「つながりあい 幸せを実感できるまち かにえ」という基本理念の実現に向けて、4つの基本目標を掲げています。
その内容は、要約すると、①町民の地域福祉の意識を高め、②地域福祉を進めるしくみをつくり、③担い手を育て、④安心して生活できる地域環境をつくるというものです。
そして、基本目標にはそれぞれ重点的な取り組みを設定しており、特に特徴的なのが、町民との意見交換を大切にしていこうとしている点と、地域福祉を進める体制(しくみ)を明確化している点です。
今回は1つの事例の紹介でしたが、この記事が自治体の「地域福祉計画」を知り、理解を深めるきっかけとなれば幸いです。
この記事を書いた人
山村 靖彦
コラバド編集者。専門は社会福祉(社会福祉士)。 数多くの行政計画策定を支援してきた経験から、いろいろな提案をしていきたいと考えています。