失敗しない!〜有料老人ホームを探す前に知っておきたいこと~

2020.12.03

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福祉のおはなし

こんにちは、ライターの田志です。
今回は、有料老人ホームの選び方・違いをご案内します。

有料老人ホームとは?

有料老人ホームとは、老人福祉法第29条第1項を根拠としている高齢者向けの居住施設です。
具体的に言うと、高齢者向けに

①食事の提供
②介護(入浴・排泄・食事)の提供
③洗濯・掃除等の家事の供与
④健康管理

のいずれか、または複数を提供している施設は有料老人ホームです。
ただし、下記の施設は有料老人ホームではないので、ご注意ください。

●サービス付き高齢者向け住宅
●特別養護老人ホーム
●養護老人ホーム
●軽費老人ホーム
●認知症高齢者グループホーム

老人ホームという言葉の難しさ

さて、ここであれ?と思われた方がいるかもしれません。
高齢者向けの施設に対する名称で、厄介なポイントがずばり!ここにあります。

難しさの原因は、言葉の定義のブレに起因しています。

Aさん 「老人ホームがね、安心して暮らすのにいいって聞いたのよ」
(※Aさんは『サービス付き高齢者向け住宅』のことを話しています。)

Bさん 「そういえば、私の知り合いもこの間、老人ホームに入ったって聞いたわ」
(※Bさんは『特別養護老人ホーム』のことを話しています。)

『老人ホーム』という言葉は広義的な使われ方をされており、「高齢者のための居住施設」であれば種々様々な形態の施設が包括的に含まれて、表現されていることが多々あります。

そのためか、『有料老人ホーム』までも『老人ホーム』と同様の包括的な呼称として扱われていることがありますが、誤用となりますのでご注意ください。

詳しい違いについては、また別の機会にお知らせします。

有料老人ホームの種類について

さて、有料老人ホームと一口に言っても、大きく分けて2種類のものがあることはご存知でしょうか?

①特定施設入居者生活介護の指定を受けた有料老人ホーム
②特定施設入居者生活介護の指定を受けていない有料老人ホーム

※特定施設入居者生活介護とは、介護保険サービスの名称です。

①の有料老人ホームの場合、当該施設で勤務している職員または委託先の介護サービス事業所が介護保険サービスを提供します。

②の有料老人ホームの場合、居住施設は介護保険サービスを提供しません。あくまでも、介護保険外サービスの提供に留まります。

つまり、介護保険サービスを提供していない有料老人ホームの場合は、利用者が自身で居宅介護支援事業所を選ぶことができます。
基本的に居宅介護支援事業所に関わらず、どの事業所を利用するかはケアプラン上において特別な事情(希望する介護サービス事業所が、ケアプラン上必要なサービスを提供することができない等)がない限り、自由です。

大事なことなので、繰り返します。

介護保険サービスを利用するにあたりどの事業所を利用するかは、利用者に選択する権利があります。

注意事項

①の有料老人ホームに入居している状態で、当該居住施設が提供している介護サービスと重複するものを、別の介護サービス事業所から提供してもらうことは原則的に難しいです。

分かりやすいように例えると、下記のような状況と思ってください。

Aというカレー屋さんにいるとします。

A店では自店舗のメニューでカレーの提供が行えるのに、お客さんがB店のカレーが食べたい!と要求してきたら、B店に行ってくださいね、と言われてしまうでしょう。

よって①の有料老人ホームで提供できないサービスなど特段、特別な事情がない限りは難しいです。

有料老人ホームの見分け方

有料老人ホームには大きく分けて2種類あることが分かりました。
では、実際に有料老人ホームを探す際にどこを確認したら見分けることができるのでしょうか?

見分けるために必要なキーワードは、『介護付き』もしくは『ケア付き』です。

特定施設入居者生活介護の指定を受けている有料老人ホームのみ、パンフレットや広告に『介護付き』もしくは『ケア付き』と記載することが許されています。

ですので、パンフレット等で『介護付き有料老人ホーム』と謳われている場合は、介護保険サービスの提供を行う有料老人ホームになります。

また、必ずしも「書かなければならないキーワード」ではないことに注意です。

キーワードが書いていないから特定施設入居者生活介護の指定を受けていない有料老人ホームだ! となるのは早計なので、入居を考えている施設にお問い合わせすることをお勧めします。

~利用者向け~ 有料老人ホームへの入居前に確認すべき事項

さて、有料老人ホームの入居を考えている皆さま。または、そのご家族の皆さま。

最低限、確認しておきたいことが2点あります。

●介護保険サービスの提供を行うことができる有料老人ホームなのかどうか
●契約書内に記載されているサービス提供(介護保険外サービス含む)の範囲はどこまでなのか

最低限、この2点はしっかりと文書で確認を取られることをお勧めします。

入居者の体調が芳しくないときに、病院に連れて行ってもらえるのか? それとも、連れて行ってもらえないのか。

「誰が、何を、どこまで、するのか」

口頭での説明だけではなく契約書の中身をしっかりと読むこと、そして疑問点を入居前に尋ねておくことをお勧めします。

~事業者向け~ 有料老人ホームの届出について

老人福祉法第29条第1項に記載されている通り、有料老人ホームの設置に関する届出は『義務』です。

未届の場合は、有料老人ホームの所在地である都道府県知事に対して、届出を提出してください。

行政が行う『指定』、『許可』、『認可』と『届出』は全く別のものであり、届出とは読んで字の通り、『届け出ること』――つまり平易に言うと『お知らせ』のことです。

有料老人ホームの所在地である都道府県知事に、「設置しますよ」または「設置しましたよ」の連絡を入れることが必須です。

老人福祉法第29条第1項には、届け出るべき内容についても記されています。

法令に関しては、下記のサイトよりご確認ください。

まとめ

●有料老人ホームとは「①食事の提供 ②介護(入浴・排泄・食事)の提供 ③洗濯・掃除等の家事の供与 ④健康管理」のうち、いずれかまたは複数を提供する高齢者向けの居住施設のことをいう

●有料老人ホームには、大きく分けて「介護保険サービスの提供を行う特定施設入居者生活介護の指定を受けている有料老人ホーム」と「介護保険サービスの提供を行わない有料老人ホーム」の2種類がある

●有料老人ホームを見分けるには、キーワード「介護付き」・「ケア付き」に注目

●入居の前に「誰が、何を、どこまで、するのか」、契約書を要チェック

●有料老人ホームの届出は「義務」

需要が高まってきている有料老人ホーム。
上記で説明した内容が、皆さまの有料老人ホーム探しの一助となれば幸いです。

 

この記事を書いた人

Ayaka Tashi

駆け出し調査員。 誰かの手助けになるようなコラム執筆を志します。

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