障がい者の”生きづらさ”を軽減する「合理的配慮」について考えてみました!
こんにちは、ライターの山村です。
2022年最初の投稿です。本年もよろしくお願いいたします。
当社は、調査をはじめ多様なデータを用いることを通じて、様々な社会問題の解決に貢献したいと考えています。
子どもの発達障害のリスクを調べるしくみとして当社が提供する「ここあぽ」(5歳児用の発達障害アセスメントシステム)も、調査データや統計学の力を活用しています。
「ここあぽ」は、適切なアセスメントにより、発達障害の子どもの発達の支援や生きづらさの軽減をめざしてご提案しているものですが、障がい者の「生きづらさ」とはどのようなもので、それを軽減するためにはどんな支援が必要なのでしょうか?
今回は、障がい者の“生きづらさ”を軽減するためにはどのような配慮が必要なのかを、少し考えてみたいと思います。
障がい者の人権を守る「合理的配慮」とは?
障がい者の生きづらさを軽減するための配慮として、国連の『障害者の権利に関する条約』には「合理的配慮」の提供の必要性が記載されています。(第五条参照)
また、第二条では、「合理的配慮」について以下のように定義されています。
合理的配慮とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。
(引用:外務省 「障害者の権利に関する条約」)
つまり、「合理的配慮」とは、障がい者の人権を尊重し、機会の不平等を正すための変更や調整のことであると解釈できます。
障害を理由とする差別や不平等から障がい者を守ることは、少なからず障がい者の生きづらさを軽減することにつながるでしょう。
障害を理由として障がい者が受ける様々な機会の不平等は、障がい者自身に原因があるわけではないので、そこは社会やサービス等の提供者側が配慮する必要があるというのが基本的な考え方です。
そのため、“均衡を失した又は過度の負担を課さないもの”との記載があるのではないかと考えられます。
また、当然ですが、合理的配慮として提供される障がい者への特別な措置等を「差別」と解してはならないことも明記されています。
日本における「合理的配慮」
条約を踏まえて、日本では、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」に合理的配慮の規定が盛り込まれています。
第七条では行政機関に、第八条では事業者に対して、合理的配慮の提供が求められています。
なお、行政機関による提供は義務、事業者による提供は努力義務とされています。
以下は、事業者に関する規定である第八条の内容です。
長いので、少し省略して紹介します。
事業者は、(中略)障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、(中略)社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。
(引用:内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」)
法律に記載された「合理的配慮」は、“社会的障壁の除去の実施”という趣旨になっています。
また、“障がい者から意思表明があった場合において”という条件が付いています。
当然ながら、意思表明が難しい障がい者もいると思いますので、行政機関や事業所をはじめ、障がい者の周囲にいる私たち1人ひとりがその点を踏まえて配慮する必要があるかもしれませんね。
これは、“私たちにできる配慮”を考える上でのポイントといえるかもしれません。
障がい者の生きづらさを軽減する「合理的配慮」とは?
(イラスト:illustACより)
ここからは、 “障がい者の生きづらさの軽減への合理的配慮の具体的な内容”について考えてみたいと思います。
内閣府のホームページには、『「合理的配慮」を知っていますか?』というリーフレットが掲載されており、ここにはわかりやすい情報が記載されています。
合理的配慮の具体例としては、障害特性に応じて障がい者の座席を決めること、段差がある場合にスロープなどを使って補助すること、書類の代筆をする際には本人の意思を十分に確認すること等が紹介されています。
また、言葉のコミュニケーションが難しい知的障害や発達障害の人への支援の例として、意思を伝え合うための絵や写真のカードの利用も紹介されています。
特に、発達障害の1つである自閉スペクトラム症の方は、慣れない場所や人が苦手だったり、気持ちを言葉で表すことが苦手だったりしますので、絵カードの利用はとても有効です。
公的機関や民間サービスの現場に従事する人だけでなく、地域で生活する多くの人がこうしたことを理解して障がい者と接すれば、社会的障壁が除去され、生きづらさは軽減されます。
下記サイトでは、実際に使える「コミュニケーション支援ボード」が紹介されていますので、一度ご覧になってみてください。
また、内閣府では、合理的配慮等具体例データ集「合理的配慮サーチ」を公開しています。いろいろな具体例が紹介されていますので、こちらもご参照ください。
合理的配慮を可能とする“適切なアセスメント”
当社が提供する「ここあぽ」では、発達障害の特性を的確にアセスメントすることができます。
特性がわかれば、どう支援したらよいか、どう接したらよいかがわかりますので、適切な合理的配慮の提供が可能となり、生きづらさの軽減に寄与できるのではないかと考えています。
よく、発達障害は、“障害”というよりも“個性”という言い方をされますが、本人たちの“生きづらさ”は決して軽いものではないと思います。
障害特性を適切に把握することができ、社会全体がそれらを柔軟に受けとめ、共生できる社会を実現していくことに、少しでも寄与できたらいいなと考えています。
この記事を書いた人
山村 靖彦
コラバド編集者。専門は社会福祉(社会福祉士)。 数多くの行政計画策定を支援してきた経験から、いろいろな提案をしていきたいと考えています。