ラウンドアバウト(環状交差点)ってご存知ですか?
こんにちは、はじめまして。ライターの髙浦です。
自動車を運転されていてドーナッツのような形をした交差点を通ったことがありませんか?これはラウンドアバウトといい、道路交通法では、「環状交差点」という名称で規定されています。交差点の中央に円形の島が設けられた信号機や一時停止の規制によらない円形交差点の一種です。
今回は数年前から全国で整備されつつあるラウンドアバウト(環状交差点)の概要と通行方法や長所などについてお話ししたいと思います。
ラウンドアバウト(環状交差点)って?
ラウンドアバウト(環状交差点)はヨーロッパ、特にイギリスで普及している信号機のない円形状の交差点で、あの凱旋門もラウンドアバウト(環状交差点)の真ん中に建っています。わが国では、平成26年9月1日から施行された道路交通法(平成25年6月、道路交通法の一部を改正する法律(平成25年法律第43号)が成立)のもとでラウンドアバウト(環状交差点)の運用が始まりました。
改正された道路交通法では、ラウンドアバウト(環状交差点)を「車両の通行の用に供する部分が環状の交差点であって、道路標識等により車両が当該部分を右回りに通行すべきことが指定されているものをいう。」と定めています。具体的には、写真のようにドーナッツ型の部分を右回り(時計回り)に通行する交差点のことをいい、ラウンドアバウト(環状交差点)に信号機は設置されていません。
交差点の手前に、車両が右回り(時計回り)に通行すべきことを指定する標識が設置されています。また、案内標識を設置する場合には交差点の形を模して方面および方向が案内されています。
飯田市東和町のラウンドアバウト(飯田市HPより引用)
車が右回り(時計回り)に通行すべきことを指定する標識
(内閣府HPより引用)
案内標識の例 (内閣府HPより引用)
道路交通法改正のポイント
(環状交差点における他の車両等との関係等)
第三七条の二 車両等は、環状交差点においては、第三十六条第一項及び第二項並びに前条の規定にかかわらず、当該環状交差点内を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
2 車両等は、環状交差点に入ろうとするときは、第三十六条第三項の規定にかかわらず、徐行しなければならない。
①ラウンドアバウト(環状交差点)では交差点内を走行する車両等が優先
改正前の道路交通法では、車両は「左方優先」、つまり、左方向から進行してくる車両の進行を妨害してはならないと定められています。ラウンドアバウト(環状交差点)においてこの「左方優先」の原則が適用されると、交差点に進入する車両に優先権があるため、交差点内を走行している車両は進入する車両に譲らなくてはなりません。これによって、交差点内には必要以上に通行車両が滞留してしまい、ラウンドアバウト(環状交差点)のメリットが機能しなくなってしまいます。
道路交通法の改正により、交差点に進入する車両より交差点内を通行する車両が優先になったことで、ラウンドアバウト(環状交差点)のメリットが生きることになりました。
②ラウンドアバウト(環状交差点)に入ろうとするときは徐行して進入
道路交通法の改正以前に試行されたラウンドアバウト(環状交差点)では交差点に進入する車両は交通規制により一時停止していました。
道路交通法の改正により、進入車両は一時停止義務から徐行義務になったことで、進入車両もスムースにラウンドアバウト(環状交差点)内に入っていけるようになりました。
ラウンドアバウト(環状交差点)の通行方法は?
①交差点に進入するとき
・交差点に進入しようとするときは、あらかじめ道路の左側端に寄って徐行し左折で進入してください。
・交差点内を通行している車両等が優先です。安全確認をして進入してください。
・横断歩行者がいるときは歩行者が優先です。
・交差点に進入する時は、合図をする必要がありません。
②交差点内を通行するとき
・交差点内は、右回り(時計回り)に通行し、側端に沿って徐行してください。
・交差点内を通行中は、交差点に進入しようとする車両や交差点内を通行中の車両、横断歩行者に特に注意して通行してください。
③交差点から出るとき
・最初の出口から出る場合には、交差点に入ったときに合図をしてください。
・最初の出口以外から出る場合には、出ようとする1つ前の出口の横を通過したときに合図をしてください。
・横断歩行者がいるときは歩行者が優先です。
④自転車での通行方法
・車と同じように交差点内を右回り(時計回り)に通行し、左側端に沿って徐行してください。
ラウンドアバウト(環状交差点)の通行方法
(神奈川県警察HPより引用)
ラウンドアバウト(環状交差点)の長所は?
①大事故が起きにくい
・信号機が無いため、交差点内を走行する車両も交差点に進入する車両も徐行します。そのため走行速度が遅くなり、激しい衝突事故が起きにくくなると考えられます。
・右回り(時計回り)の一方通行で、交差点内の車両は同じ方向に進みます。そのため一般的な十字交差点で起きたような右折車と直進車とのダメージの大きい衝突事故を防ぐことができると考えられます。
②少ないライフサイクルコスト
・信号機が無いため、信号機の設置と維持管理の費用が掛かりません。
・停電の影響も受けないため、大規模な災害発生時でも交通が混乱しにくくなると思われます。
③環境負荷を軽減
・赤信号のような長い時間車両を停止させることがないためアイドリング時間が少なくでき、環境負荷の面でも優れていると思われます。
・車が来なくても停止を求められる信号交差点に比べ、ドライバーの余分なイライラが少なくなると思われます。
逆に短所は?
①交通量の多い交差部には向いていません
・国土交通省ではラウンドアバウト(環状交差点)の適用条件を、「交通量の少ない平面交差部に導入するものとする。平面交差部の日当たり総流入交通量が 10,000 台未満にあっては、ラウンドアバウトを適用することができる。」とし、日当たり総流入交通量が 10,000 台以上の場合には、交通量の詳細を検討し判断するものとしています。
・「歩行者及び自転車の交通量が多い平面交差部では、利用者の安全かつ円滑な交通の確保に留意するものとする。」と留意事項に示されています。
②少し大きい面積が必要です
・ドーナツ型の部分を車両が安全に回れる交差点にするため、少し大きな交差点になると思われます。
③右折できないので少し遠回りになります
・一般的な十字交差点のように右折はできないため、左折して270度回らなくてはなりません。
まとめ
今回はラウンドアバウト(環状交差点)の概要と通行方法や長所などについてお話ししました。日本では、まだ50か所程度ですが、旅行先などでラウンドアバウトを通ることがあれば参考にしてください。これからも交通安全、ライフサイクルコスト、環境負荷に優しいラウンドアバウト(環状交差点)は増えていくと考えられますので、みなさんのまちにも整備されることがあると思います。
この記事を書いた人
髙浦 正幸調査部
以前、建設コンサルタントに勤務、主に道路の計画・設計に携わる。技術士(建設部門・道路)を保有。