進む地球温暖化! 日本にも影響が・・。影響にしっかり対応する「気候変動適応策」とは?
こんにちは。ライターの木村です。
主に環境問題をテーマにした調査・研究に携わっています。
今回は、最近話題になっている気候変動のお話をしたいと思います。
今年の夏も猛暑?
今年は5月21日に全国187地点で最高気温が30℃以上となりました。
この日、群馬県館林市では35.3℃を観測し、早くも猛暑日が出現しました。また、5月30日にも全国277地点で30℃以上となりました。
今年の夏も強烈に暑いのでしょうか? 気になるところです。
「猛暑日」は気象庁の予報用語で、一日の最高気温が35℃以上の日を指します。
この用語は2007年にできました。
それ以前も暑さを示す予報用語はいくつかありました。
一日の最高気温が25℃以上となる「夏日」、同じく最高気温が30℃以上となる「真夏日」、最低気温が25℃以上となる「熱帯夜」などです。
「猛暑日」という新しい用語が必要になった背景としては、「猛暑日」に該当する気象条件が増えてきたことが挙げられます。すなわち、最高気温が35℃以上となる日が増えてきているのです。
また、雨に関しては、「記録的短時間大雨情報」が発表されるようになり、一般的には「ゲリラ豪雨」という言葉も使われるようになっています。
これらの新しい情報や言葉の登場も、以前にはあまりなかったような雨の降り方が増えていることの表れでしょう。
気温、雨の降り方をはじめとして、皆さんの子どもの頃とは気候が変わってきたと実感している方も多いのではないでしょうか。
気象観測データをみると、実際にその実感通りであり、しかも、このような気候変動は今後も続く、あるいは増大していくと予測されています。
下図は、現在の気温の平年値(1981年から2010年までの30年間の平均気温)と毎年の平均気温との差を表したものですが、2000年以降は1980年代からみると1℃程度上がっているのが分かります。
「日本の平均気温の変化」(気象庁)
次の図は、前世紀末の気温と今世紀末の気温の差を表しています。
赤が濃いところほど気温上昇が進むと予測されています。
一方、低温化が進むと予測されたところは青く表示されるのですが、春夏秋冬、日本全域が真っ赤です。
見ているだけで暑くなります。
「平均気温の変化(将来気候の現在気候との差)」
(気象庁 2013 『地球温暖化予測情報 第8巻』)
気候変動の影響
「暑い」「雨の降り方が変わった」だけですめばよいのですが、この変化の程度が大きくなれば、人命や健康、社会や経済にそれだけ大きく影響が及ぶので大変です。
例えば、熱中症にかかる可能性、農産品の減収や低品質化、豪雨時の避難行動の遅れなど、さまざまなリスク(危険性)が気候の変動幅に応じて変化します。近年ではこのようなリスクが現実のものとして現れ、毎年、熱中症や風水害等のニュースが流れています。
さて、ここまで「気候変動」という言葉を使ってきましたが、多くの方にとっては「地球温暖化」のほうが馴染みがあるかもしれません。ここではどちらも同じだと理解して頂いてかまいません。
10年程前には、地球温暖化の影響として“ツバル(南太平洋の島)が海に沈む”、“氷床が溶けてシロクマが海に流される”といった象徴的な画像が活用され、地球温暖化防止に貢献しようという趣旨で啓発が行われていました。このような画像は、温暖化防止の取組の国際的な約束を定めた「京都議定書」(第1約束期間は2008年~2012年でした)の目標達成に向けて、国民的な運動を展開する時に多用されました。覚えている方も多いのではないでしょうか。ツバルやシロクマの状況はより深刻になっており、温暖化防止への貢献という趣旨は今なお重要になっています。
ただ、今はもう一つの文脈が相当に重要な意味を持つようになってきました。それは日本に暮らす私たち自身も気候変動の影響に曝されているという事実です。先ほど触れた熱中症、農産品、風水害の例にも、気候変動が関係しているとみられています。気候変動の影響が既に私たち自身にとって身近で大きな問題となっているのです。
「気候変動適応策」とは
気候変動の影響に曝されているなら、それにしっかりと対処できるように適応していかなければなりません。気候変動の影響は既に触れた悪影響ばかりではなく、好影響もありえます。悪影響を極力減らし、好影響を活かしていくことが重要となります。
実は、このように気候の変動に適応した社会づくりが既に始まっています。このような社会づくりを政策的に進めていく場合、それらの策を総称して適応策と呼んでいます。政府は、国として実施していく適応策をとりまとめた「気候変動の影響への適応計画」を2015年に策定しました。同年には国土交通省や農林水産省も所管分野の適応計画を策定しました。
まとめにかえて
国だけではなく、地方自治体でも適応計画を策定する動きが加速しつつあります。気候変動の影響の現れ方は地域によって異なるため、自治体の役割が重要視されています。国費による研究プロジェクトにおいても自治体への適応策の実装化を課題に組み込んだものが少なくありません。今後の自治体の動向が注目されます。
これからシリーズで、主に地域目線で「気候変動適応策」を追っていきます。私たちの暮らしに欠かせないテーマですので、引き続き投稿していきます。ご期待ください。
<参考文献・資料>
気象庁(2013)「地球温暖化予測情報 第8巻」
気象庁ホームページ(http://www.jma.go.jp/jma/index.html)
この記事を書いた人
木村 浩巳世論・計画部 世論・計画1課
法政大学地域研究センター客員研究員、専門社会調査士。 2009 年度より環境研究総合推進費E-0906(2)「日本の自治体における低炭素社会構築及び地球環境問題への取り組み促進施策に関する研究」,2010 年度より環境研究総合推進費S-8(2)「自治体レベルでの影響評価と総合的適応政策に関する研究」,2015 年度より文部科学省SI-CAT「気候変動技術社会実装プログラム」に参加。著書に『気候変動に適応する社会』(共著,技報堂出版)、『地域からはじまる低炭素・エネルギー政策の実践』(共著,ぎょうせい)など。