高齢者の運転免許の更新【その①】 高齢者の運転免許保有と交通事故
はじめまして、ライターの片桐です。
75歳以上(後期高齢者)になって初めての免許更新の様子を、2回にわたって紹介します。
今回は、高齢者の免許関連のデータをみていきます。
75歳以上の免許保有者は500万人超え
65歳以上の高齢者の人口は、平成28年10月現在で3,459万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)は27.3%(約4人に1人)となっています。
そのうち、75歳以上は1,691万人で、総人口に占める割合は13.3%であり、これからも増えることが予想されます。
平成28年末の全国の運転免許保有者数(原付以上)は8,221万人で、このうち、75歳以上の免許保有者数は513万人となります。
これは、75歳以上人口の約3人に1人にあたります。
前年末に比べて35万人(7.3%)増加し、今後5年間で100万人も増加すると推計されています(図1参照)。
<図1>
75歳以上の交通事故の割合が増加傾向に
内閣府の資料では、死亡事故の全体件数は減少傾向にあり、75歳以上の件数もこの10年間ほぼ横ばいで推移しています。
ただ、死亡事故全体に占める75歳以上の運転者による死亡事故の割合は年々上昇傾向にあります。
平成27年では、死亡事故件数(全体で3,585件)の12.8%にあたる458件が、75歳以上の運転者によるものです。
この割合は、平成28年には13.5%とさらに上昇しています(図2参照)。
<図2>
運転免許の自主返納者が過去最多に
警察庁のデータによると、運転免許の自主返納者全体は平成10年の制度導入以降毎年増え続け、平成29年には42万2千人と過去最多となっています。
そのうち、75歳以上の自主返納者は25万3千人で、全体の60%を占めており、前年に比べて増加しています。
運転者自身が、運転技術や反射神経などの衰えを感じて返納しているケースが多いものと考えられますが、近年の高齢者の事故の増加等の影響から、家族の勧めもあり返納者が増加しているのではないかと考えられます。
実際に、私の友人も、家族の勧めで返納した人が何人かいます。
警察でも、「運転に不安がある人は返納を検討して欲しい」としていますので、75歳以上の高齢者の返納者はこれからも増加することが予想されます。(図3参照)
<図3>
運転免許の更新手続きが強化される
平成29年3月に、高齢者の運転免許更新手続きが改正され、75歳以上の更新はこれまで以上に厳しくなりました。
75歳未満はほぼ従来どおりですが、75歳以上は講習の前に受ける「認知機能検査」の結果によって、内容や時間の異なる講習が実施されるようになったのです。
これは、前述のように75歳以上の免許人口が多くなったことや事故件数の増加等が背景にあるものと考えられます。
全体の変更点は図4を参照してください。
なお、「認知機能検査」の内容は、次回に報告させていただきます。
<図4>
(注記)認知症のおそれがある方は、後日、臨時適性検査を受け又は医師の作成した診断書を提出するものとされ、検査結果等により認知症と判断された場合は、運転免許の取消し又は停止となります。
まとめ
2030年には、人口の30%が65歳以上の高齢者となり、生産年齢人口の減少が加速する、いわゆる「2030年問題」が大きな話題になっています。
そのため、国でも少子化対策とともに、高齢者雇用対策、年金受給開始年齢の引き下げなど、様々な取り組みが実施・検討されています。
今回の記事を書くために、いろいろなデータを見てきたことにより、自動車の運転に限らず超高齢化によって引き起こされる様々な社会問題をあらためて実感することができました。
私も足腰が弱くなり、反射神経や運動能力も落ちてきて、ヒヤリハットの場面が増えてきました。
妻や子どもから、そろそろ返納も考えたらどうかという声も出ていたのですが、通院や買い物などに不便を感じるため、更新に踏み切りました。
次回は免許更新の手続きと認知機能検査について詳しく紹介します。
(参考)
・内閣府ホームページ(特集「高齢者に係る交通事故防止」)
・警察庁「運転免許統計」
・警察庁ホームページ(高齢運転者に関する交通安全対策の規定の整備について)
この記事を書いた人
片桐 清
調査経験が長いだけの後期高齢者