子ども・子育て支援新制度から3年<前編>~今までの国の取り組みは?新制度はなぜ必要だったのか?~
こんにちは、男の子3人の父親、ライターの一杉です。
子ども・子育て支援新制度が始まって、4月で3年を迎えます。
保育所、幼稚園、認定こども園に通うすべての園児が、この新制度のもとで入園したことになります。
新制度が始まる前と比べて何が変わったのでしょうか。
変更点を再確認しながら、今後の課題について展望します。
今までの国の取り組みは?
子ども子育て支援新制度は、お子さんが保育所や幼稚園に通っている方はご存知でしょうが、なかなか馴染みがない制度ですよね。
これから家族が増える方、お孫さんができる方も知っていて損はありません。
これは、「新制度」とあるように、これまでの制度を新しくしたものです。
では、これまでの制度を見ていきましょう。
国は、1990(平成2)年の「1.57ショック」(2人の大人から1.57人の子どもしか生まれないという衝撃的な数字)を契機に、仕事と子育ての両立支援など子どもを生み育てやすい環境づくりに向けての対策の検討を始め、1994(平成6)年に、「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」(エンゼルプラン)を策定しました。
自治体には、児童育成計画(エンゼルプラン)を策定するよう推奨しましたが、浸透するまでには時間がかかりました。
2003(平成15)年には「次世代育成支援対策推進法」を制定し、行動計画策定指針を定めています。
この中では、子どもの視点や次代の親づくりといった視点が重視されています。
これにより、全都道府県、全市町村に行動計画の策定が義務付けられました。
子ども・子育て支援新制度は、2012(平成24)年の「子ども・子育て関連3法」の制定を受けて制度化され、幼児期の教育・保育の一体的な提供、保育の量的拡充、家庭における養育支援等を総合的に推進し、一人ひとりの子どもが健やかに成長することができる社会の実現を目指しています。
ちょっとブレイク
「1.57ショック」が、28年前の1990(平成2)年のことだった!
筆者にとっては、これもショックな話です。
このときからおよそ30年も経過しているのに、事態は好転していないということです。
それどころか、2015(平成27)年は1.45、2016(平成28)年は1.44と改善の兆しが見えない状態です。
人口を維持していくには、合計特殊出生率が2.07必要だと言われています。
これを人口置換水準と呼びます。
子どもたちが成人になるまで20年かかりますから、人口を安定的に維持できるようになるまでには、とてつもない時間がかかります。
こんなことはありませんが、仮に今日、「合計特殊出生率が5.00になりました!」となったとしても、20年間は労働力にならず、税金を納めることもありません。
ですから、経済面での好影響も20年先までは望めないのです。
人口を維持していく取り組み、すなわち少子化対策は、昨年より今年、今年より来年と、少しずつでも成果を積み上げていくことが大事です。
このスタートが1年遅れると21年先、2年遅れると22年先と、人口を維持できるGoalの年がどんどん遠のいていきます。
なぜ、子ども・子育て新制度が導入されたのか?
では、何が少子化対策に有効なのか?
その視点も踏まえて導入されたのが子ども・子育て支援新制度です。
もちろん、子どものための制度ですが、「子育て」という言葉が象徴しているように、変わりゆく保護者のニーズにも応え、一人ひとりの子どもの健やかな成長を目指しているわけです。
都市部では待機児童が増加し、地方では子どもの数がどんどん減少しています。
保育所には定員を超えるニーズがあるのに、幼稚園では定員に満たないところが出てきています。
こうしたミスマッチの解消に向けて、幼保一元化、幼保一体化、といった議論が行われ、最終的に認定こども園を増やすことになりました。
また、保育所は厚生労働省、幼稚園は文部科学省が所管していることでうまくいかない面がありましたが、内閣府が主導することで前進がみられます。
まとめ
このように、国は日本全体の制度設計をしましたが、実情は地域によって大きく異なります。
そのため市町村は、子ども・子育て支援行動計画を策定するにあたり、児童の保護者を対象としたアンケート調査を実施し、そのニーズを踏まえた施策をプランニングして遂行しているところです。
次回は、子ども・子育て支援新制度によって、具体的に何が変わったのか、そしてこれからの課題は何なのか、掲載していきますのでお楽しみに!
※<後編はこちらから!>
この記事を書いた人
一杉 浩史営業企画本部
専門はまちづくり。 自治基本条例や総合計画、地方創生総合戦略などの策定を支援。 何足のわらじを履いているか自分でもわからない(笑)。