アンケート調査における良くない質問③~木を見て森を見ずの質問とは?~
ごあいさつ
ライターの田原です。「アンケート調査における良くない質問!」シリーズの第3弾です。
“アンケート調査における良くない質問!”をテーマに連載記事を始めましたが、こちらで最後になります。
今回は、木を見て森を見ずな質問、キャリーオーバー効果について紹介します。
キャリーオーバー効果は、前の質問の内容がその後ろにある質問の回答に影響を与えることを指します。
前回ご紹介した誘導質問と近いと考えられます。
これまでと同じように、例を見ながら説明していきます。
キャリーオーバー効果
問1:環境問題への取組として、〇〇市では植林を行っていることをご存知ですか。
1.知っている
2.知らない
問2:〇〇市の環境施策についての満足度を教えてください。
1.満足
2.やや満足
3.どちらともいえない
4.やや不満
5.不満
教科書や他のサイトのキャリーオーバー効果の説明でよく出てきそうな質問ですね。
ここでは、問1の「環境問題への取組を行っている」という良いイメージの内容が問2の満足度に影響を与え、問2の回答が「満足」の方向に引っ張られる可能性が考えられます。
「環境問題への取組として植林をしている」という内容は、多くの方が「〇〇市は良いことをしているな」と思ってしまうことが予想できますよね。
今回は、良いイメージの効果をご紹介しましたが、「〇〇市では犯罪が増えている」等のネガティブなイメージにすると、「不満」の方向に回答が引っ張られる可能性が出てきます。
ではどうすれば良いのか
キャリーオーバー効果を回避するためにはどうすれば良いのでしょうか。
・方法1:順番を逆にする
満足度を先に聞いてから、後で取組について知っているか聞くとキャリーオーバー効果が起きなくなりますね。
・方法2:間に関係のない質問を入れる
キャリーオーバー効果が起きそうな質問の間に別の関係のない質問を入れるのも一手です。問をクッションとして挟むという形ですね。
でも、それで良いのか?
さらっと回避方法を書きましたが、この方法を使うと問題も生じます。
調査票は全体的に一つのストーリーとなっているほうが答えやすく、関係のない質問が途中で入ったりすると、回答者が混乱してしまいます。
また、調査票は「〇〇市の満足度」「〇〇水族館の満足度」等、一定のテーマに沿って構成されることが多いため、質問間につながりがあることは当然です。
そのため、キャリーオーバー効果対策のために、安易に順番を逆にしたり、関係の無い質問を入れたりしてしまうと、統一感の無い、答えにくい調査票になってしまう恐れがあります。
つまり、前の質問の影響を受けるということを念頭においたうえで調査票の設計を行い、キャリーオーバー効果の影響が過度に出そうなところだけ、調査票全体の統一感を崩さないように手を加えることが必要となってきます。
質問一つを見るのではなく、調査票全体を見ること、「木を見て森を見ず」の状態にならないことが大切です。
そこで大事な「プリテスト」
キャリーオーバー効果の影響が過度に出そうなところを発見するためには、プリテストを行うことが欠かせません。
プリテストは、キャリーオーバー効果の発見だけではなく、これまでの連載で書いた、様々な良くない質問の発見にもつながります。
調査の良し悪しは、プリテストをきちんと行うかどうかに依存するといっても過言ではないと思います。
なお、プリテストについては、ライターの山村が詳しく説明しているので、こちらを参照してください。
おわりに
3回にわたって、良くない質問について紹介してきました。
これまで紹介したことを、知った上で調査票を設計するのと知らずに設計するのとでは、全く違うと思います。
これまでに紹介した例は調査票設計における基礎中の基礎です。
また機会があれば、当メディアでいろいろなものを紹介していきますが、もっと知りたいという方がいらっしゃいましたら弊社までお問い合わせください。
以前の記事のように、レクチャーも行っています。
調査票の作成は調査の基礎であり、肝でもあります。
リサーチャーはより良い調査票設計のために、日々勉強や試行錯誤をしていますので、是非ともリサーチャーが丹精込めて作り上げた調査票への回答にご協力いただけると幸いです。
<過去記事>
この記事を書いた人
田原 歩静岡事務所 企画課
最強の男