日本の人口はなぜ減っている? 人口問題の基礎の基礎(自然増減と社会増減)
ごあいさつ
はじめまして。新人ライターの伊藤です。
現在、日本の人口は減少を続けていると言われていますね。
先進国であるこの国は少子高齢化が進行しており、今後もこの傾向は続くものと考えられています。
しかし、人口の増加や減少は、出生と死亡以外にも様々な要因が関わって起こっています。
そこで今回はそんな要因のなかから、日本国内で起こっている人の動きと人口の増減の関係について考えてみたいと思います。
都道府県別に見た日本の人口増減
「日本国内で起こっている人の動き」として、都道府県別に、人口動態を見てみます。
平成29年10月に行われた人口推計の結果を見てみると、前年と比べて人口が増加した都道府県は、全国でたった7都県のみでした。
その他の40もの道府県は人口が減少しています。
人口が増加した7都県の顔ぶれを見ると・・・
(増加率が高い順に)東京都・埼玉県・沖縄県・愛知県・千葉県・神奈川県・福岡県
となっています。
沖縄県を除けば、どれもビジネスの中心である大都市とそのベッドタウンとして発展している県ばかりです。
この結果から、「都市圏は、他の都道府県からヒトを吸収して人口を増加させている」という構図があるのではないか、という見方ができます。
では、日本の人口増減をより細かく見ていきましょう。
自然増減と社会増減
人口の増減には、大きく2種類があると考えられています。
それが、「自然増減」と、「社会増減」です。
「自然増減」は、出生と死亡によって起こる人口の増減のことを指します。
一方の「社会増減」は、他地域からの転入や他地域への転出によって起こる人口の増減のことを指します。
この2種類の増減を用いて考察すると、日本の各自治体の人口の増減は、
「自然増加・社会増加」「自然増加・社会減少」
「自然減少・社会増加」「自然減少・社会減少」
の4種類に分けることができます。
日本の47都道府県の人口動態(平成29年)をこの4種類に当てはめると…
(出典:www.stat.go.jp/data/jinsui/2017np/index.html )
「自然増加・社会増加」状態の都道府県はなく、一方で、実に32もの道県が、出生数が死亡数を下回り、さらに他の都道府県から転入してくる人よりも他の都道府県へと転出していく人が多いという「自然減少・社会減少」の状態にある、という結果が見えてくるのです。
この結果からも、いかに地方から都市圏に人口が流出しているかがわかるのではないでしょうか。ではなぜ、地方の人口が減少しているのでしょうか。
なぜ地方の人口が減少しているのか
地方の人口が減少している原因は大きく2つ挙げることができます。
①若者の都市圏への流出
何度も書いていますが、地方の人口の減少の大きな要因は若者の都市圏への流出だと言えます。
多くの若者が、就職や進学など、人生の節目で地方を離れ東京をはじめとする大都市圏へ移住しています。
地方圏※の転出超過は、1954年から2016年までで1,100万人を超える、とされているデータもあります。(e-Stat『住民基本台帳人口移動報告年報』より)
※地方圏…全47都道府県から、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)、大阪圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)、名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)を除いた36道県のこと
若者、すなわち将来子どもを産み育てる若年層が流出するということは、ただ単純に人口が減少するだけでなく、「将来的に人口を増加させる(維持する)力」まで失うことを意味しています。
若年層の流出は、それだけ地方にとって大きな損失となるのです。
おまけに、大都市圏の代表格である東京は全国でもっとも出生率が低い都道府県です。
若年層が多く流入していながら、国全体の人口の増加・維持にはつながらないというのが現状なのです。
②晩婚化
これも大きな要因の一つと言えます。
結婚に対する価値観やライフスタイルの多様化、長引く不況による経済状況の変化などによって、晩婚化は進行の一途を辿っています。
これは都市部に限ったものではなく、全国的な傾向として表れています。
平均初婚年齢の上昇は、バブルが崩壊した90年代中頃から急速に進行し、1995(平成7)年時点では男28.6歳・女26.3歳でしたが、2016(平成28)年には男31.1歳・女29.4歳となりました。
たった20年ほどの間に約3歳も上昇しています。
(厚生労働省『平成29年(2017)人口動態統計月報年計(概数)の概況』より)
晩婚化が進めば、必然的に子育てに充てられる時間は短くなり、結果的に少子化と人口減少につながっていきます。
かく言う筆者も、独身であるうえ、都市部での就職を希望していた身なので偉そうなことを言えた口ではありませんが・・・
まとめ
日本の人口減少の実態を詳しく見てみると、このように人々の動きの流れや、人口問題が起こる原因が明らかになってきます。
今回取り上げた内容は人口問題のごく一部(タイトルにある通りです)であり、他にも様々な要因が絡み合っていることは事実です。
しかし、この記事を通して少しでも皆さんが人口問題の構造について考えるきっかけになればと思います。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
参考文献:
増田寛也『地方消滅 東京一極集中が招く人口急減』中公新書 2015年
この記事を書いた人
伊藤 拓哉静岡事務所 企画課
静岡県出身。関西の大学へ進学後、大都市圏への就職を夢見るも地元へと戻り現在に至る。それでも静岡は住み心地の良い所だと思っている。今年は本厄。