科学の力でいじめをなくす② ~科学の力で学校が変わります!~

2019.02.09

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政策のおはなし

※この記事のペーパー版(PDF)をダウンロードしていただけます。

こんにちは。ライターの山村です。
前回の記事“科学の力でいじめをなくす①~子どもの「行動」へのアプローチを考える~”に続き、今回は実際に“子どもの行動変容に取組んだ中学校の事例”をご紹介いたします。

ご紹介するのは、文部科学省委託事業である「子どもみんなプロジェクト」に取組んだ、静岡県浜松市の中郡中学校区の事例です。

「子どもみんなプロジェクト」とは、

不登校、いじめなど、子どもの問題を、こころの発達の視点から解決する、子どもと先生を支える全員参加のプロジェクトです。
「子どもみんなプロジェクト」ホームページより

平成30年11月22日に開催されたプロジェクト発表会では、3つの学校の取組が紹介されました。

科学的な生徒理解に基づく生徒指導の実践

浜松市中郡中学校区の小中学校では、「科学的な生徒理解に基づく生徒指導の実践」(浜松市教育委員会指定教育研究)と題して、公益社団法人子どもの発達科学研究所(以下、研究所という)の指導の下、子どもの行動を変える取組を行ってきました。

3校に共通したやり方は、まず児童・生徒に「アンケート調査」を実施して課題を把握し、その解決のための取組を「立案」して「実践」し、その成果を再度「アンケート調査」で確認するということです。

これはまさにPDCAですね。

科学的で効果的な取組を「立案」して「実践」する、そのために事前・事後の「調査」が有効に活用されています。

今回の記事では、3校の発表のうち浜松市立中郡中学校の事例をご紹介させていただきます。

「関係性」の改善策を実行!

中郡中学校では、平成29年3月から平成30年5月までの間に、研究所の指導の下で4回の「調査」が実施されています。

調査の主なテーマは、「学校風土」「いじめ」の現状把握です。

そのうち、「学校風土」は、①安全②教えと学び③関係性④学校や地域の環境の4点に着目し、32の質問が設けられています。

結果は下図のとおりです。


「関係性」が大きくマイナスを示していました。
関係性とは、①子ども同士の関係②子どもと教師の関係③子どもと学校の関係④子どもと集団の関係です。
これらの改善に焦点化した取組を「立案」し、「実践」することになりました。

調査当時、中郡中学校では、いじめによる重大事態の発生はありませんでした。
しかし、小さな問題はいくつもあり、生徒指導に要する教職員の負担は大きかったと、研究会でも報告されていました。

重大事態にまでには至らなくても、子どもたちはいろいろな感情を抱え、それが問題行動にも表れていたのだと考えられます。

取組①「生徒が活躍できる場を増やした!」

関係性を改善するため、中郡中学校で「実践」されたことの一つは、学習や行事を通じて生徒が活躍できる(協力して意思決定ができる)場を設定したことです。

具体的には、以下のようなことが行われました。

①体育大会「全校ソーラン節リーダー」の新設

これまで、教師の主導で実施されていた体育大会の「全校ソーラン節」を、新設した「全校ソーラン節リーダー」を中心に実施する形に切り替えました。

②既存の「上級生リーダー」の活動内容を見直した

体育大会の応援合戦を、縦割りパフォーマンス大会とし、生徒のアイディアを重視する内容に変更しました。上級生リーダーを中心に実施する方法に変更したことで、上級生が下級生を指導する関係性も生まれました。

③生徒会主催行事の設定

昼休みドッチビー大会、ハッピーサークル(学級内で仲間を褒め合う)など、生徒会主催行事を設定しました。

取組②「感情コントロールを学ぶ!」

もう一つは、感情コントロールの方法を学ぶことです。

学校内で起きた生徒どうしのトラブルに、生徒自身が対応できるようにするため、感情コントロールの6つのステップを書いたポスターを作成し、校内に掲示しました。

トラブル発生時には、まず①クールダウンする②相手の言い分を聞く③自分の言い分を話す④解決のアイディアを出す⑤アイディアを選ぶ⑥実行する、以上の6つがその内容です。

しかし、ポスターの掲示だけでは浸透しなかったため、さらにこれを「い・さ・お」(いいぶんを、さいごまで、怒らずに話を聞く)というフレーズに圧縮しました。

この「い・さ・お」のロールプレイを先生方が全校生徒の前で「演劇」として行い、浸透を図りました。

取組後の「学校風土」評価は?

さて、これまで見てきた取組の結果、中郡中学校の学校風土はどのように変化したのでしょうか?

取組後の「調査」結果は図のとおりです。
効果は歴然ですね!
わずか8か月の間に、学校風土がこれだけ改善されました。
そして、教職員の実感としても、生徒指導に要する負担が軽減されたとのことです。
この変化には、本当に驚かされます。
これがまさに“科学の力”です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
科学的な考え方に基づく取組には大きな効果がある可能性が高いことをお分かりいただけたものと思います。

今回は、学校風土の改善に焦点化した事例でしたが、基本的にどの学校でも「調査」→「実践」→「調査」という流れでの取組みが可能です。

弊社は、この「調査」の実施に、研究所とともに取り組んでいます。
風土の改善やいじめの解消に向けて、多くの学校で様々な取組が行われているものと思いますが、“いまひとつ効果があがらない”という学校関係者や自治体関係者の方は、ぜひ一度ご連絡いただければと思います。(ご連絡はこちらまで!)

この取組を通じて、すべての学校の風土が改善され、いじめなどの問題が無くなることを願っています。

(関連記事)

科学の力でいじめをなくす①~子どもの「行動」へのアプローチを考える~

(関連リンク)

子どもみんなプロジェクト
公益社団法人 子どもの発達科学研究所
こころの発達アテンダントベーシックコース
こころの発達アテンダントスマイルコース(保護者さん向け)
学びの発達アテンダントベーシックコース
いじめ予防プログラムTriple Change

この記事を書いた人

山村 靖彦名古屋事務所

コラバド編集者。専門は社会福祉(社会福祉士)。 数多くの行政計画策定を支援してきた経験から、いろいろな提案をしていきたいと考えています。

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