「子ども食堂」に行ってみた!

 

ライターの岡本です。
ここ1~2年ぐらいでしょうか。新聞やネットなどの報道で、「子ども食堂」に関する話題を良く見かけるような気がします。
そのため、昨今では、「子ども食堂」を知らないという人は少なくなっているのではないでしょうか。

「子ども食堂」の一般的な受け止められ方は、「貧困家庭」や「孤食」の子どもが1人でも利用でき、地域住民が無料あるいは少額で食事を提供する場所というところでしょう。

貧困対策の一環として捉えられているため、利用者には「貧困世帯」というイメージがつきまとってしまう問題があります。

私も含めて、利用したことがない方にとっては、その存在意義とは別に少し特別な場所というイメージがあるかもしれません。

実は、6月末の毎日新聞に、以下のような記事が掲載されていました。

地域の子どもに無料または低額で食事を提供する子ども食堂が、全国で少なくとも3,718カ所になったとの調査結果を、NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」が26日、東京都内で記者会見し公表した。昨年調査の1.6倍に上り、同NPOは「子ども食堂は貧困対策のためだけでなく、地域の交流拠点だという認識が広がりつつあるため」と分析している。
調査は、各地の子ども食堂のネットワークを支援する同NPOが、各県のネットワークを通じて昨年6月から今年5月時点で把握できる数を集計した。食事を出している学習支援教室を含めるかなどの判断は、回答者に委ねた。
子ども食堂の数は、横ばいの秋田県をのぞく46都道府県で増加した。東京都、大阪府、神奈川県など大都市で多いが、増加率でみると長崎、茨城、福島の3県で3倍以上に増えた。

全国に3,718箇所も開設されているんですね。
ちなみにコンビニと比較すると、比較的よく目にするミニストップが2,200店舗、デイリーヤマザキが1,500店舗ですから、これらの中堅コンビニを上回る数が既に存在しています。

「子ども食堂」に行ってみた!

7月の初旬、私の地元(枚方市)で子ども食堂を運営されている方からお誘いいただき、お邪魔させていただく機会がありました。 

枚方市のHPによると、市内では18箇所の「子ども食堂」が運営されています。
(以下、枚方市HPより)

「子ども食堂」へのサポートを行っています。
市は、家で1人で食事をとるなど家庭的にさまざまな課題のある子どもたちに対し、食事や学習、団らんの場を提供する市内の団体に補助金を交付し、子どもの居場所づくり(子ども食堂)を推進しています。
実施場所は、小学校や生涯学習市民センターなどの公共施設のほか、地域の集会所やデイサービスセンターなどで、場所により異なりますが、月1回~毎週実施されています。
各団体の取組みに関する情報は、こちらのホームページで随時お知らせします。
※食材のご寄付をいただける方や、子どもに勉強を教えていただける学生の方(学習支援ボランティア)がおられましたら、子ども青少年政策課にて団体との取り次ぎをいたしますのでご連絡ください。

その日は、土砂降りの雨の中、18箇所あるうちの1箇所にお邪魔して、様々な子どもたちに交じって晩御飯をいただきました。

思っていた以上に賑やかで明るい雰囲気の「場」でした。

訪問した「子ども食堂」は、子どものための食堂としての機能だけではなく、ボランティアの中高生と一緒に勉強を教えあう場であったり(学習支援機能)、子どもたちの遊びの場であったり(交流機能)していました。

また、子どもだけでなく親と一緒に食事をしている家族(中には在日の外国人の家族も)がいたり、食事後はスタッフ(かなり年配の女性が多いです)を含めて来訪者の団欒の場となっていたりする等、地域交流の場としても機能していました。

運営スタッフは15人から20人です。
大学生から中学生までがボランティア(学習支援ボランティアも兼ねる)として参加しているほか、スタッフの声掛けで参加している発達障がいのある若者や就労支援で参加している方など様々です。
複数の中高生や大学生が毎回参加していることにはびっくりしました。

この日の食事は、カレーライス(子ども用の甘めと大人用の辛めを準備)とサラダ、デザートのティラミスというメニューでした。
調理場の制約や保健衛生の関係で、メニューはある程度限定されるようです。(肉じゃがやオムレツなどの家庭料理が中心)。

この食堂では今、デザートは中学生のボランティアが担当しています。
1回5,000円の材料費を手渡して、メニュー考案から調理まですべてを任せて手作りしてもらっていました。
ちなみにこの中学生は、小学生時代からの「子ども食堂」利用者とのことです。(右写真奥の集団が中学生ボランティア)

参加者は毎回、大人が5人程度、全体で30人~40人程度とのことでした。

市からの補助金は、1開催あたり15,000円です。
食事代(参加費)は、中学生以下の子どもは無料、高校生以上は100円が基本です(100円以上ならいくらでも可)。
これは、食堂によって若干異なるようです。
食材は、当然ながら地産地消で、様々な支援者からほぼ無償で提供されています(スーパーのような店舗もあれば農家や個人からの提供もあり)。
全国的にどこの「子ども食堂」もほぼ同じレベルでの運営だと思います。

下の写真は、子どもたちの食事が終わってから撮影したので、テーブルには誰もいませんが、18時~18時30分ぐらいまでの間はほぼ満席でした。

私が訪ねたこの「子ども食堂」は、団地の集会所を活用して運営されており、団地の居住世帯だけを対象にした規模のものです。
食堂によっては、もっと広いエリアにお住いの方々を対象にしているところもあるようですね。
今回が第72回の開催ということでしたので、ちょうど3年ぐらい続いていることになります。
この「子ども食堂」の運営には、市の補助金のほかにも福祉系の財団等からの補助金も活用されているとのことで、年間数十万円の補助の中から、食材以外のインフラ部分(調理室の安全面の確保、空調施設の補修・設置等)の整備に充てられていました。

「子ども食堂」で考えたこと

「子ども食堂」の運営には、運転資金は必須ですし、ボランティアスタッフの定期的な確保も重要なポイントになります。
内閣府の調査(平成30年度 子どもの貧困に関する支援活動を行う団体に関する調査)によると、6割の「子ども食堂」が運転資金の不足に直面し、運営団体の自主努力が限界となって閉鎖するところも多いと聞きます。
枚方市内の「子ども食堂」でも、私が訪ねたこの食堂は頑張っている方だと聞きました。

また、「子ども食堂」は綺麗ごとばかりではありません。次のような問題が指摘されていることも知っておいてほしいと思います。

貧困家庭と見られるのが嫌で本当に貧困状態にある子どもが利用しづらいという問題
(周囲からの目が気になる)

貧困世帯や孤食の子どもでなく、安く食事ができるから来る普通の親子がいる、いわゆるフリーライダーの問題
(就業している親が帰りに夕食の手抜きで来訪する)

私が訪ねた「子ども食堂」のスタッフからは、1点目の話は聞かれませんでしたが、2点目に近い話は伺うことができました。
実際、そういう方が来られても、受け入れを断ることはできないとも仰っていました。

地域における「子ども食堂」の存在意義とは?

全国にこれだけ急増した「子ども食堂」の存在意義は何でしょうか?

NPO法人「もやい」も言うように、“市民ができることとしての子どもの貧困対策”として、「子ども食堂」はとても重要な取り組みであることは間違いありません。 

今回、現場を見て感じたことですが、「子ども食堂」は単に子どもの貧困対策にとどまらず、親も運営スタッフも含めた地域住民(でない場合も含め)の交流の場としても重要な意味を持つのではないでしょうか。

さらに、子どもたちの社会性を育む場としても機能しうるのではないかと感じます。

以前、当メディアでも「現代社会における、”いいあんばいのコミュニティ”とは?」という記事を掲載し、コミュニティの形について考えています。

ひょっとしたら、「子ども食堂」の利用者は、地域に″居場所“を感じられない方々なのかもしれません。
100%を受け入れる「場」は、おそらくどこにもありませんが、地域の誰もがどこかに居場所を見つけられることは“いいあんばいのコミュニティ”の1つの形なのかもしれません。

まちづくりでいう、ある種の“サードプレイス”といってもいいかもしれません。 

最後に、筆者の専門ではありませんが、当社は、各種福祉計画や子ども・子育て支援事業計画、まちづくりのグランドデザインや総合計画策定など、地域住民の目線を大切にした調査や計画策定を支援しています。

“誰ひとり取り残されないインクルーシブな社会”の実現に向けて、「子ども食堂」の問題も引き続き考えていければと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

この記事を書いた人

岡本 俊哉都市・交通分野

都市・交通分野長 JCOMM(法人会員)の他、福祉のまちづくり学会、NPO再生塾、NPO枚方環境ネットワーク会議等、まちづくりや公共交通関係の諸団体と関わりを持っています。

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