COVID-19に関する人々の意識と行動(土木学会からの受託調査の紹介)

2021.04.12

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政策のおはなし

こんにちは、ライターの岡本です。
また、この話題か・・・と、読者の皆さまにはお叱りを受けるかもしれません。
1月に地域限定で再発出された『緊急事態宣言』は、3月に入って首都圏を除く地域から順次解除され始め、わが国においても医療関係者へのワクチン接種が始まったところです。
これから春~夏にかけて、自治体でも高齢者から順にワクチン接種を始める予定という案内を、自治体のホームページや広報誌でも目にするようになっています。
皆さまもしっかりと正確な情報を把握して、接種に備えていただければと思います。

 昨年、当社はCOVID-19関連の多くの自主調査を実施して、ホームページやメディアを通じて情報の発信に努めてまいりました。年末の当コラムでも結果の一部を紹介しています。STOP!感染拡大 「行動を変えて、家族・友人・社会を救おう」)

 当社は、COVID-19だけでなく災害時の住民の情報取得や行動、観光インバウンド客の意識や行動、在留外国人の生活実態等々、時宜に応じた社会課題をテーマに、多くの自主調査を実施しています。

 他方で、社会課題を研究しているアカデミア(学会や大学)からも、様々な調査の委託を受けることがあり、その結果は学会やシンポジウム、関係雑誌等の専門領域で報告がなされています。
ただ、それらはなかなか一般の方々の目に触れる機会がないため、今回は私の仕事での管轄領域(都市・交通)に関わりの深い学会(公益社団法人土木学会)からの委託調査結果を少しだけご紹介したいと思います。

二度の緊急事態宣言で人々の意識・行動はどう変化したのか

今回ご紹介する調査は、“「パンデミックに対する被害軽減/レジリエンス確保」の実践に貢献しうる基礎データ収集”との目的で実施されたものです。
さすがにアカデミアが実施する調査なのでちょっと固いテーマですね。
学会のホームページ(下記リンク参照)では、“研究⽬的ならばどなたでも活⽤可”として調査データも公開されています。

日本モビリティ・マネジメント会議/「二度の緊急事態宣言で人々の意識・行動はどう変化したのか」
土木計画学研究委員会/COVID-19に関する行動・意識の基礎的調査

この調査は、「パネル調査」(※)形式で以下の3回実施しています。
※調査対象者を固定化(パネル化)し、一定期間繰り返しアンケートを行う調査方法

①『WAVE1:2020/5/21~24』(1回目の緊急事態宣言下)
②『WAVE2:2020/10/9~10/19』(第3波の前、各種のGoto事業の実施期)
③『WAVE3:2021/1/22~28』(2回目の緊急事態宣言下)

今回ご紹介するのは、WAVE1の調査後の中間報告(土木計画学研究委員会による「COVID-19に関する土木計画学研究発表セミナー」(2020年8月13日実施))と、WAVE3の後に開催されたJCOMM(日本モビリティ・マネジメント会議:当社も法人会員です)のモビリティ・セミナー「アフター宣言解除:まちと暮らしのひらき方」(2021年3月9日実施)での報告内容のほんの一部です。

最初の緊急事態宣言時に指摘されていた2つの問題点

WAVE1の時点では、以下の2つの問題点が指摘されていました。

1)リスク回避行動の不徹底

・外出中のマスク着用や手洗いに比べて、「目・鼻・口を触らない」が徹底されていません(感染症予防の観点からは非常に重要なポイントと言われています)。

(図1)

2)誤ったリスク認知

・感染リスクや死亡リスクが過大評価されています。
・下図のとおり、「1回外出した時の【感染確率】」「電車、バス、タクシーに1回乗車した時の【感染確率】」などが過大評価されています。
「感染リスク」:0%~100%まで10%刻みの割合で回答、「死亡リスク」:100人あたりの実数で回答

(図2)

また、調査でわかったことの一つに、在宅(自粛)をストレスと感じる人よりも楽しいと感じる人が多かったことなどもありました。(図3参照)

(図3)

以上、WAVE1の調査の中間報告の一部をご紹介いたしました。

この1年で、私たちの意識や行動は変化したか?

私たちはこの1年間、あらゆるメディアから様々な情報を受け取り続け、COVID-19に関する多くの知識を得てきました。WAVE1の調査からほぼ1年が経過した2021年39日のセミナーの報告で、上記の問題点に関する認識がどのように変化したのかを見てみましょう。

 1)「目・鼻・口への接触抑制」は改善されていない

図4は、リスク回避行動の実施状況を示しています。各項目に3つの帯グラフがあり、一番上(May-20)は2020年5月の調査、真ん中(Oct-20)が202010月の調査、一番下(Jan-21)が2021年1月の調査結果です。

元々実施率が高かった「マスクの着用」は更に上昇していますが、問題点としていた「目・鼻・口への接触抑制」は改善されていません。

(図4)

2)「感染リスク」や「死亡リスク」への過大評価は改善されていない

感染リスクや死亡リスクを過大に評価する傾向はどうでしょうか。
「1回外出したときの感染確率」については、1年前よりもさらに過大評価されていることがわかります(2020年5月は19.7%、2021年1月は20.7%、実際には0.0050%以下)。
また、「1回、電車やバスやタクシーに乗車時の感染確率」への認識や「死亡リスク」への認識も、ほとんど改善されていません。
「死亡リスク」は、中央値だと大きく下がるため、かなり過大な数値を回答している方の影響が大きいと思われますが、それでも実績値(図2)との乖離が大きいと言えます。

(図5)
(図5-2)

正しい情報の提供が大切!

こうしてみると、効果的な行動変容や誤ったリスク認知の解消を促す正しい情報の発信、適切なコミュニケーションは本当に大切だと感じますね。
同時に、情報の受け手である私たちにも、客観的な事実や正しい情報を取得し、適切に判断することが望まれます。

過度に車に頼る状態から公共交通や自転車などを『かしこく』使う方向へ自発的に転換する=“モビリティ・マネジメント”を推進する学会に所属する立場としては、この1年の過度の外出自粛や公共交通の利用激減は、将来のまちづくりや移動の確保を考えるにあたって憂慮される事態であり、新たな課題を生み出したと感じています。
 今回ご紹介したのはごく一部の調査結果であり、この調査については引き続き学識の方々による詳細な分析が続けられる予定です。

また、例えばリスク回避行動に関しては、12月の当コラムの記事で紹介した内容(当社の自主調査結果)と同様の結果を示しています。
他にも新型コロナ関連の多くの調査が行われていますので、いくつかの調査の公表結果を見比べてみるのも、自ら正しく情報を判断するためには有効な行動ではないでしょうか。
 なお、今回ご紹介した調査結果は、下記のアドレスからアクセス可能なので、関心がある方はご覧ください(調査結果の使用に関しては学会にお問い合わせください)。

日本モビリティ・マネジメント会議
土木計画学研究委員会

私たち株式会社サーベイリサーチセンターは、冒頭にも記載したとおり多くの自主調査を実施・発信していますが、当然ながら事業として何百倍もの受託調査を実施しています。

ほんの一例としてご紹介した今回の結果からも、正確な調査を実施することに加えて、情報を正しく伝えること、幅広い受け手に理解してもらうことの難しさを、あらためて感じている次第です。
私たちは、的確に調査を設計・実施し、正しく有効な情報を社会に提供することを使命としています。

これからも様々な期待に応え、有益な調査情報、時には「オッ!そうだったのか」と思うような情報や知見を社会に提供していきますので、今後も当メディアにご注目いただければと思います。

注)本文中の図表は調査受託先の土木学会所属の東京理科大学 田中皓介助教の以下の資料から引用(一部加筆)したものである(公開先のHPアドレスは文中に記載)
「COVID-19に関する行動・意識の基礎的調査」~COVID-19に関する土木計画学研究発表セミナー~
「二度の緊急事態宣言で人々の意識・行動はどう変化したのか」~JCOMMモビリティ・セミナー「アフター宣言解除:まちと暮らしのひらき方」~

 

この記事を書いた人

岡本 俊哉

都市・交通分野長。JCOMM(法人会員)の他、福祉のまちづくり学会、NPO再生塾、NPO枚方環境ネットワーク会議等、まちづくりや公共交通関係の諸団体と関わりを持っています。

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