「子ども・子育て支援事業計画」を知ろう①(制度編)
こんにちは、ライターの山村です。
皆さんは、ご存知でしょうか?
皆さんがお住まいの市町村では、今まさに「子ども・子育て支援事業計画」を策定しており、今年度末には完成するスケジュールになっています。
この計画は、簡単に言うと、お子様の保育・教育事業(保育園、幼稚園、認定子ども園に関すること)や小学生の放課後の居場所(学童保育など)に関することなどを決める行政計画です。
お子さんをお持ちの皆様にとっては、とても重要な計画です。
今回から、数回に分けて、「子ども・子育て支援事業計画」を多くの皆さんに知っていただき、その内容について考えるきっかけになるような情報提供をさせていただきたいと思います。
第1回として、今回は、制度的な側面からのお話をさせていただきます。
「子ども・子育て支援事業計画」とは
まず、「子ども・子育て支援事業計画」の法律的な側面を見てみましょう。
市町村が策定する「市町村子ども・子育て支援事業計画」は、子ども・子育て支援法第61条で以下のように規定されています。
市町村は、基本指針に即して、五年を一期とする教育・保育及び地域子ども・子育て支援事業の提供体制の確保その他この法律に基づく業務の円滑な実施に関する計画を定めるものとする。
この規定からは、5年間の計画であること、事業の提供体制の確保に関すること等を記載する計画であること、市町村は計画を策定しなければならないことなどがわかります。
さらに、同法には、市町村子ども・子育て支援事業計画に記載する事項が定められています。
これについては、法律の趣旨を踏まえた「基本指針」が出されており、以下のような内容が記載されています。
<計画に記載する事項(基本的記載事項)>
①教育・保育提供区域の設定
②各年度における教育・保育の量の見込み
③教育・保育の提供体制の確保の内容及びその実施時期
④地域子ども・子育て支援事業の量の見込み
⑤地域子ども・子育て支援事業の提供体制の確保の内容及びその実施時期
⑥教育・保育の一体的な提供に関すること
⑦施設等利用給付の円滑な実施に関すること
基本的記載事項とは、計画に記載しなければならない事項(必須事項)です。
①の教育・保育提供区域とは、保護者や子どもが居宅から容易に移動することができる区域として定めるものです。
②の教育・保育の量とは、幼稚園、保育園、認定子ども園などの提供量(定員など)のことです。③の提供体制の確保の内容及びその実施時期では、それをいつから、どれだけ実施していくのかを記載します。
④、⑤の地域子ども・子育て支援事業は、市町村が地域の実情に応じて実施する事業で、情報提供や相談・助言などを行う「利用者支援事業」や「地域子育て支援拠点事業」、昼間に一時的に子どもを預かる「一時預かり事業」、保育認定を受けたお子さんを利用時間を超えて保育する「延長保育」、病児を一時的に保育する「病児保育」、放課後に保護者が家庭にいない小学生を対象とした「放課後児童クラブ」など、全部で13の事業があります。
⑥の教育・保育の一体的な提供とは、主に「認定こども園」の整備に関することです。
⑦の施設等利用給付とは、今年10月から実施されている幼児教育・保育の無償化に伴い、対象となるサービスの利用について受ける必要がある認定です。市町村は、保護者の経済的負担の軽減や利便性等に配慮し、給付方法を検討するよう定めることとされています。
こうしてみると、市町村子ども・子育て支援事業計画に記載する事項は、子どもの預かりに関すること、すなわち“親への支援”が中心であるように感じるかもしれません。
しかし、「基本指針」には、
子ども・子育て支援については、この法の目的を達成するため、「子どもの最善の利益」が実現される社会を目指すとの考えを基本に、子どもの視点に立ち、子どもの生存と発達が保障されるよう、良質かつ適切な内容及び水準のものとすることが必要である。
と記載されています。
つまり、子どもの預かりなどの“親への支援”が中心ではなく、「子どもの最善の利益」としての子どもの生存と発達を保障できる計画の策定を考えることが必要です。
そのため、子ども・子育て支援法第61条第3項には、上記のほかに計画に定めるよう努める内容(任意記載事項)への規定が盛り込まれています。
次項で、詳しく見ていきましょう。
計画への任意記載事項
市町村子ども・子育て支援事業計画に、地域の実情に応じて定めることとされた事項は、以下のとおりです。
こちらも、「基本指針」を参照します。
<計画に記載する事項(任意記載事項)>
①産後の休業・育児休業後における教育・保育施設等の円滑な利用の確保
②専門的な知識及び技術を要する支援に関する都道府県事業との連携
・児童虐待防止対策の充実
・母子家庭及び父子家庭の自立支援の推進
・障害児施策の充実
③職業生活と家庭生活との両立に必要な雇用環境の整備に関する施策
①は育児休業の利用との関係、②は虐待防止、ひとり親家庭支援、障害児施策、③は仕事と子育て等との調和に関すること等、幅広い視点が指摘されていることがわかります。
これを踏まえて、市町村がどのような計画を作るのかは、子ども自身や保護者の皆さんにとって、とても重要な内容となるはずです。
任意記載事項も踏まえて、市町村計画としてどのような内容の計画が考えられるのかについては、次回の記事でご紹介したいと思います。
なお、自治体の計画のほとんどは、計画案が策定された段階で住民に公開され、意見を聴取する“パブリックコメント”が実施されます。
「市町村子ども・子育て支援事業計画」についても、原則としてパブリックコメントが行われますので、その際には今日ご紹介したような情報を知っていると役立つのではないかと思います。
ぜひ、お住まいの自治体が発信するパブリックコメント情報にも関心を持っていただければと思います。
では、この続きは次回記事(「子ども・子育て支援事業計画」を知ろう②(政策編))にて!
<参考資料>
子ども・子育て支援法
教育・保育及び地域子ども・子育て支援事業の提供体制の整備並びに子ども・子育て支援給付並びに地域子ども・子育て支援事業及び仕事・子育て両立支援事業の円滑な実施を確保するための基本的な指針(内閣府)
この記事を書いた人
山村 靖彦
コラバド編集者。専門は社会福祉(社会福祉士)。 数多くの行政計画策定を支援してきた経験から、いろいろな提案をしていきたいと考えています。