「子ども・子育て支援事業計画」を知ろう③(計画編)

2019.12.24

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福祉のおはなし

こんにちは、ライターの山村です。
市町村子ども・子育て支援事業計画についての第3弾です。
前回は、任意記載事項の内容から、市町村施策に盛り込むことができる内容について考えてみました。
今回は、それらの視点を実際に「計画書」に反映させたらどのような形になるのか、少しだけご紹介したいと思います。

(第1弾、第2弾はこちら!)
「市町村子ども・子育て支援事業計画」を知ろう①(制度編)
「市町村子ども・子育て支援事業計画」を知ろう②(政策編)

「計画書」の基本的な構成を理解しよう!

まず、自治体の計画書の基本的な構成(目次)をご紹介します。
もちろん、計画の種類や内容によって、計画書の構成はさまざまですが、基本的なパターンは概ね下図のとおりです。

まず、「第1章」では、計画をつくる趣旨や目的、法律上の位置づけや計画の期間などを記載します。

「第2章」では、この計画のテーマに関連した現状データや資料等を紹介します。計画書によっては、こうした資料は巻末にまとめて掲載している場合もあります。また、この章の最後には「課題」をまとめて表現すると、よりわかりやすくなります。

「第3章」は、第2章で明らかにされた課題を解決し、将来どうなることをめざすのか等の考え方を記載します。“めざす将来の姿(こうなりたい状態)”を表現したものが「基本理念」です。

また、多くの計画では、ここに「計画の体系」を記載します。
計画の体系とは、言い換えれば“計画の骨組み”です。
ロジカルシンキングの手法である「ロジックツリー(あるいはピラミッド・ストラクチャー)」を活用して作成され、「基本理念の実現」を筆頭に、課題や目標が多層的に整理されています。
これについては、後で詳しく説明します。

「第4章」には、「計画の体系」に沿った形で、「施策の方向」(これから何を行うのか)を記載します。

そして「第5章」には、具体的な数値計画(ニーズ量と提供可能量)が掲げられます。
「市町村子ども・子育て支援計画」のように数値目標(教育・保育の量の見込み、確保方策など)が多く記載される計画の場合には、このように独立した章を設けることが多いですが、数値目標が少ない場合には他の章に併記する場合もあります。

「第6章」には、計画の評価方法や推進体制について記載します。

こうしてみると、計画の全体像に大きく影響するのが「計画の体系」であることがお分かりいただけると思います。
つまり、どのような「計画の体系」を作るかによって、計画の範囲や内容は概ね決まってしまうのです。
そのため、計画の体系を考える際には、前回の記事で紹介した「基本的記載事項」や「任意記載事項」を踏まえた思考が大切になってきます。
あくまでもモデルケースではありますが、実際にどのような「計画の体系」になっていくのかの一例を次項で見ていきたいと思います。

ロジックツリーを用いて「計画の体系」を考える

ロジカルシンキングの手法であるロジックツリーを用いて、実際に計画の体系を考えてみましょう。
今回は、「子どもが元気に成長・発達できるまち」の実現を、“めざす将来の姿(基本理念)”として展開してみます。
その実現のために、まず「子ども自身の最善の利益を守る支援」と、「親の子育てへの支援」の2つが必要という形に展開しました。
ちなみに、子ども自身への支援と親への支援は重複しませんので、この状態をMECE(ミッシー・またはミーシー)といいます。
ロジックツリーの各段階は、MECE(モレなく、ダブリなく)である必要があります。

「子ども自身の最善の利益を守る支援」としては、子どもの人権を理解する啓発、質の高い幼児教育の実施、児童虐待の予防、障害児への支援、いじめや不登校の予防、子どもの貧困対策などが考えられます。

以前の記事(当社が今、”いじめ予防”に注力する2つの理由!)でもご紹介しましたが、虐待、いじめ、不登校、貧困、間違った教育などは子どもの成長・発達を阻む危険因子です。
反対に、子どもの人権への理解や質の高い幼児教育は子どもの成長・発達を支える保護因子といえるでしょう。
「子ども・子育て支援事業計画」において、子どもの成長・発達の保護因子となる施策に加え、危険因子の影響から子どもを守る施策を重視することはとても重要です。

「親の子育てへの支援」としては、保育事業の充実、子育て支援事業の充実、ひとり親家庭への支援、相談や情報提供などが考えられます。

以上の内容を一覧表にしたのが上の図です。
これが、「計画の体系」となります。
便宜上、「基本理念」「目標」「施策の方向」などと見出しを付けることが多いですが、これは一様ではありません。
本当は、「基本理念」「目標」「施策の方向」の各段階で客観的な評価ができる必要がありますが、自治体の計画の場合はどうしても概念的な内容が含まれてしまいます。
上図の基本理念である「子どもが元気に成長・発達できるまち」という表現も概念的であり、何をもって実現できたと評価するのかは難しいところです。
このあたりは自治体計画の評価プロセスにおける課題だと思っていますので、今後も考えていきたいと思います。

ところで、みなさんは、上図をみてどう感じたでしょうか。

「施策の方向」が色分けしてあります。
青文字が「基本的記載事項」に該当する部分、赤文字が「任意記載事項」に該当する部分です。
黒文字はその他の項目ですが、子どもへの支援、親への支援として必要だと思われる内容なので、実際の業務で私はいつも提案している内容です。

実は、この記事で最も伝えたかったことは、“何が必要なのかを考えて計画に盛り込むことの大切さ”です。

国の指針を充足していればいいという考え方ではなく、「子どもの最善の利益」を守るためには何が必要なのかを考えるのが計画ではないでしょうか。
ロジックツリーを使ってロジカルに思考を展開すれば、子どもの発達を阻むいじめ、不登校、貧困などの課題への対策も重要であるということは自ずと見えてくるはずですね。

以上、3回にわたって「子ども・子育て支援事業計画」に関する情報をご紹介いたしました。
今回の情報を、計画策定に関わる方、計画の影響を受ける市民の皆様など、様々な方にご活用いただけたらと思います。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

 

この記事を書いた人

山村 靖彦

コラバド編集者。専門は社会福祉(社会福祉士)。 数多くの行政計画策定を支援してきた経験から、いろいろな提案をしていきたいと考えています。

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