自治体のPDCAはなぜ機能しないのか 〜短期間PDCAのススメ!~

2021.01.19

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行政のおはなし

 

こんにちは。ライターの一杉です。今年もよろしくお願いいたします。

 新しい年を迎え、一年の抱負を考えた方も多いかと思います。
実は自治体が策定する計画にも、計画期間中に何を何回やるか、その結果どういう状態を作り出すか、こうした目標をたてることが多くなりました。
最近話題のSDGs17のゴールが明確になっていて、231の指標が立てられています(最近232から231になったようです)。

しかし、目標はあってもPDCAが機能していない場面を私は多く見てきました。
そこで今回は、自治体のPDCAはなぜ機能しないのか、そしてどうしたら機能するのかについてご紹介します

PDCAとはなんだ!

さすがに、PDCAは市民権を得た言葉だと思いますが、おさらいします。
PPlan=計画、DDo=実行、CCheck=確認、AAction=改善ですね。

計画してやってみた(PD)で終わってしまうことや、計画してやってみてチェックした(PDC)で終わってしまう場面が多々あります。だいたいどの計画でも、PDCAのサイクルで進めますと書いてありますね。これは、PDCAのサイクルを回し続けることで、よりよい進め方やよりよい結果につなげられる可能性が高まると言われているからです。

PDCAのうち、どれが悪者か?

自治体の計画でPDCAが機能しない要因の一つは、「P」にあります。
ありたい姿や大切にしたい考え方、これらに基づく具体的な施策、場合によっては個別の事業まで、「P」すなわち計画には掲載されています。
計画をつくることが「P」なので間違いではありませんが、どうやってチェック、確認、評価するか、ここまで考えて計画をつくることは、あまりありませんでした。

そこで、自治体の計画にも数値で測ることができる目標が必要だ、という機運が高まり、指標や数値目標が設定されだしたのが約15年前、そして、KPIという言葉が使われだしたのは地方創生が始まった頃ですから、約5年前になります。

 指標を掲載しましょう、そこには数値で測ることができる数値目標を掲載しましょう、これにより、自治体においても計画した取り組みを評価するようにはなったのですが、できました、できませんでした、の量的評価しかされなくなりました。
ここが落とし穴ですね。
できた、できないという達成・未達成のみを「C」確認としてしまったがために、「A」改善がなくなってしまったのです。

自治体の計画でPDCAが機能しないもう一つの要因は、この「C」にあります。

達成・未達成の量的評価だけになってしまうと、未達成の部分が叩かれて終わってしまいます。
本当はとても野心的な目標だったかもしれませんし、とても保守的な目標だったかもしれません。
あるいは、今回のコロナのような想定外の出来事が影響したのかもしれませんし、優先すべき別の事業が発生したのかもしれません。
数値目標に固執した結果、こうした質的な評価が蔑ろにされているのが現状です。

 数値目標に固執することになった「P」と、量的評価しかしなくなった「C」が悪者、と言えそうです。
A」改善は登場する場面すらなくなってしまっています。

どうしたらPDCAが機能するか?

PDCAを機能させるためには、量的な評価と並行して質的な評価も行ってください。
いや、むしろ量的な評価は目安でしかないので、評価ではなく文字通り「C」チェック=確認で十分です。
数値目標を達成したかどうか、これは表面的な評価に過ぎません。
10個の数値目標のうち7個を達成した、だからこの計画はまずます達成した、などという評価は、「A」改善につながりませんから今後はやめましょう。

量的な評価は、「A」改善を考えるための入り口としては重要です。
これがないと取り組んだ結果がどのポジションに位置しているかが見えないからです。
くどいようですが、数で表しているから位置がわかる、位置を確認するだけです。

これから、PDCAを機能させたい皆さんは、質的な評価も行ってください。
数値目標を達成したものについては、なぜ達成できたのか、どうしたらもっと良い成果を残せるか、達成しなかったものについては、なぜ達成できなかったのか、どうしたら達成することができるか、これらを文章で残しましょう。

この質的評価結果をもとに、次年度の取り組みを検討します。

同じ主体で同じ方法で同じ取り組みをしても、結果は大きく変わりません。
だからこそ「A」改善が必要なわけです。
こうした検討は、恐らく実施計画レベルで行われることと思います。
来年度はここと連携してみよう、住民へのPRの方法を変えてみよう、などと工夫を凝らしていく、これが「A」改善です。
改善を加えた「P」計画を作り、PDCAを回していくことで、取り組みが磨き上げ(ブラッシュアップ)られていきます。

A」改善した取り組みを行っても、期待した成果を得られないこともあります。
その場合は、改善した取り組みが数値目標の達成に寄与していない可能性があります。
そのため、また知恵を絞って改善策を考え取り組んでみる、というようにPDCAをグルグル回すことが大切です。
こうした状態になれば、PDCAが機能していると言えるでしょう。

最後に提案です

「短期間PDCAのススメ!」です。
現状では多くの自治体で年に一度のPDCAを実践しています。
民間企業では、四半期ごとに経営レポートを発表したり、月ごとに拠点の営業数値を確認したりするなど、短期間でPDCAを回す取り組みが一般的です。
自治体の皆さんも短期間PDCAに取り組んでみませんか?
今月はこの事業が進まなかったな、上半期は何もしていない事業があったな、などと軌道修正が可能な段階で気づくことができ、早い段階で改善の一手を打つことができます。

 今年の抱負を考えた皆さんも、短期間PDCAを回してみましょう。
今年は5kg痩せるぞ!という目標であれば、毎月「C」をしてみましょう。
どうして痩せられないのか。その原因を考え、取り組みを変えてみましょう。
1年後にはきっと痩せていると思いますよ!

 

この記事を書いた人

一杉 浩史

専門はまちづくり。自治基本条例や総合計画、地方創生総合戦略などの策定を支援。何足のわらじを履いているか自分でもわからない(笑)。

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